院長ブログ カーブ

Close

第206回 忙酔敬語 少子化対策は発展途上国に学べ

17歳の少女が妊娠のため受診しました。一緒に来たお母さんは途方にくれた様子でした。スタッフも、さてどうしたもんかと思案顔。でも、これって生物学的には正しいことです。少子化、晩婚化と騒がれていますが、当院の近辺は日本全体の統計とは一風変わって発展途上国のようです。低学歴、多産、それによる子供の人口増加。小学校も統合どころか平成16年には屯田小学校の児童数が札幌一となり、平成17年に屯田北小学校が開設されました。(さすがに最近は増加に歯止めもかかり、お産も減少傾向にあります)
7年ほど前、若いお母さんが大勢の家族に囲まれてお産をしました。そのとき、太ったご婦人が「ひ孫だ、ひ孫だ」とはしゃいでいました。年を訊くと56歳とのこと。オレと同じだ!と愕然としました。この年だと、ひ孫の面倒もみれそうです。ただ、タバコ臭くてメタボな感じで長生きしそうもない。でも、孫やひ孫の子育てを手伝いながら生物としての使命はキッチリまっとうできそうでした。
若年女性の妊娠もいろいろ取りざたされていますが、大脳皮質に汚染されずに本能が残っているのか、みな赤ちゃんに対する反応が良ろしい。退院診察のとき、「赤ちゃんが何で泣いているのか分かりますか?」と訊く、「ハイ、大体分かります」。三十もなかば過ぎた初産婦さんはこうはいかない。「全然、分かりません」と呆然としている。
札幌市では、こうした初妊婦さんを支援するために昨年の9月から妊娠4、5ヵ月をメドに訪問看護を開始しました。私はいくら口で説明するよりも実際に赤ちゃんに触れることが一番だと考えています。あちこちで、このアイデアを吹聴して回っていたら、すでに一部では試みられているとのことでした。
総合研究大学院大学の大槻 久先生によると、子供の生存率は、その母親の生存にかかわっているそうです。これは当たり前ですね。つぎに重要なのは母方の祖母の存在。父親には大した役目はないそうです。更年期のお祖母ちゃんは子育て支援のキーパーソンなのです。現在は核家族社会で、働き蜂的なお祖母ちゃんが不在の中で子育てを強いられています。お産を終えて間のないお母さんが、子供を保育園に預けて働くという、お母さんにとっても子供にとっても不自然な社会です。本来、生まれてから2,3年は母親ベッタリの状態が、赤ちゃんにとってもお母さんにとっても自然な姿です。そしてそれを支援する最大の力は更年期のお祖母ちゃんの存在です。
栄養が足りている状態で若い男女をほったらかしにしていれば妊娠するのは当然です。そんな若者をしっかりと援助していけば自然に人口は増加します。かたや更年期近くになって不妊症に悩むカップルもいます。そもそも更年期近くにもなって妊娠するのはカラダに悪いことです。流産率は高まるし母体自体が血栓症などで危険な状態に陥ることもあります。高齢のカップルが若い女性が産み落とした健康な赤ちゃんを引き取るということで万事上手くいくのではないでしょうか。あくまでも自分たちの遺伝子を受け継いだ子が欲しいというのは狭い了見です。もともと人類はアフリカから誕生し、みな共通した遺伝子を持っています。それでもヤダと言い張るのなら地球は全部自分の物と考えてみてはどうでしょうか。自分以外の人間、そして、それを取り巻く自然もすべて自分の大切な物です。
新年早々、変なことを言うなあ、と呆れるかもしれませんが私は本気です。このようなマクロ的な視野が戦争や自然破壊を防ぐ根幹だと信じています。