院長ブログ カーブ

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第202回 忙酔敬語 漢方薬を飲む前に

先週処方された漢方薬がよく効いたのでもっと処方して欲しい、と患者さんが受診しました。その漢方とは温経湯で、処方したのは津村先生。さすが津村先生、一発でみごとに決めました。
温経湯の効能を見ると、ツムラの場合(メーカーによって多少違います)、月経不順、月経困難、こしけ(何のことだか分かりますか?女性の「おりもの」のことで昔言葉です。私も、学生時代に読んだ本の中に出てきましたが、何のことやら分からず、前後関係で判断しました)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹、足腰の冷え、しもやけ、と書いてあります。これを読むとまるで女性にとっての万能薬みたいですが、もちろん誰にでも効くわけではありません。温経湯の本来の目標は、冷えた体を温め、乾燥を潤し、血行を改善するという3つのポイントです。そういった3拍子がそろった患者さんには実に良く効きます。逆に言えば、ふだんから温かい飲食物を摂り、保湿に気を配り、適度な運動をして血行の改善をすれば良いのです。
練馬総合病院の漢方医学センター長の中田英之先生は、まだ四十代の新進気鋭の産婦人科医ですが、東洋医学の天才です。漢方にとどまらず鍼治療も行い、痛みで転げ回っている患者さんを次々と治していくため、先生のワザを盗もうと鍼灸師が集まって定期的に勉強会を行っています。気功も会得していて東洋医学の診断法の望診(患者さんのかもし出すオーラを読み取ること)で、瞬時に診断をくだします。
中田先生は、漢方治療の前提としてスイーツ、とくに甘い果物を摂らないように指導しています。果糖は体を冷やしたりして害をおよぼす上に、依存性があり治療の妨げになると言うのです。砂糖は果糖とブドウ糖から構成されているのでこれもダメ。ちなみに麦芽糖すなわち水飴はブドウ糖だけで構成されているのでこれはヨシ。水飴はカラダに良いので小健中湯や黄耆健中湯の主力の生薬となっています。果糖がどうしてイケナイのかよく分かりませんが、サルの仲間でに主に未熟な果実を食べている種があります。なんでもこのサルは熟した果物を食べると致命的に体調を崩すそうで、人間にもその気があるのかもしれません。そう言えば私も幼少のみぎり、近所のサクランボを青いうちに食べるのが好きでしたが、母が買ってくれた赤いサクランボは変に甘くてキライでした。本能的に果糖の毒性を感じとっていたのかもしれません。冷えなどの不調を訴える患者さんに食生活について訊いてみると、ほとんどアイスなどにハマっていまて、「アイスを止めるくらいなら死んでもいい」と言うので、しかたなく安中散や当帰四逆加呉茱萸生姜湯など温める薬を処方します。しかし当の中田先生は、教育講演の後の宴会で、デザートのチョコレートケーキをペロリと平らげたので、「それはどうゆうことですか?」と突っ込んだところ、「たまには良いんです」とケロリとしたものでした。
今年の産婦人科漢方研究会で中田先生にお目にかかったおり、休憩中、
「最近、どうして漢方薬が効いたかと考えるよりも、どうして漢方薬が必要になったかを考えるのがわれわれ臨床家の努めだと思うんですけど」と話したところ、
「同感です!」と力強く賛同してくださいました。
そこで思い起こしたのが四物湯を何年も延々と飲んでいる患者さん達のこと。飲まないと生理が止まるのですが、どうしてそうなるのか未だにサッパリ分かりません。