院長ブログ カーブ

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第200回 忙酔敬語  江差の思い出

先週に続いて江差のお話し。江差には檜山支庁があり、函館とは別の意味で道南の中心です。パスポートの購入など公的な手続も手軽にできて便利でした。江差の住民は滑稽なほど函館に対抗意識を持っていました。函館人は何とも思っていなかったけれど・・・。
町立病院は地域の中核病院で、当時、常勤は、内科4人(1人は院長)、外科2人、整形外科1人、小児科1人、そして産婦人科1人。眼科は出張医でした。大病院になると他科への相談は別の病院のあつかいみたいで面倒くさいのですが、このくらいの病院だと医局でかくかくしかじかと気楽に相談できて自分にとってはちょうど良いなと思う規模でした。問題は電波が届かないこと。まだ携帯はなく医師の必需品はポケベルでしたが、それが機能しないのです。どこかに出かけるたびに「どこそこにいる」と一々病棟に電話しました。ある日、近くのスーパーで買い物をしていたとき、ちょっとの間だから、まっ、いいか、と連絡しなかったのですが、突然、「町立病院の佐野先生、至急病棟に連絡ください」と店内放送がかかりました。誰が見ていたんだろう? さいわい大したことはありませんでしたが、こんな暮らしに耐えられるかどうかで田舎暮らしの適不適が別れるんだなと思いました。私は全然平気。子供時代から父の転勤であちこち転校したおかげで、けっこう適応能力はありました。
江差は現在の屯田以上に自然の息づかいが旺盛で、ある朝、お産に呼ばれたとき、チョッピリ開いていたドアグラスから進入した蜘蛛が、ハンドルからフロントグラスにかけて大きな巣をかけていて、巣を透して運転したことがありました。こんな所に巣を張っても獲物はないのに馬鹿な蜘蛛だと思ったことでした。また、あるときは2泊ばかり函館に行って玄関の扉を開けた途端、上から大量のゲジゲジが降ってきました。「蜘蛛の子を散らすように」という言葉がありますが、それまで何のことやらよく分かりませんでした。しかし、ほとんど使っていない2階の一室の隅に何かゴミのような塊を見つけ、チョット突いてみたら、それこそ小さな蜘蛛の子がちりぢりに散らばって行きビックリしました。でも「これが蜘蛛の子なんだ」といたく納得しました。家は元院長宅でそれなりに立派ではありましたが木造で古く、この他にも様々な生き物が進入してきました。毎夜、台所がガサガサしてうるさいので、看護師さんに相談したら「きっとネズミだからごきぶりホイホイを仕掛けてみたら」と言われました。「ネズミにごきぶりホイホイはないだろう」と半信半疑で仕掛けてみたら、はたして小さなマウス(クマネズミ)がかかり「チーチー」と鳴いていました。可哀想でしたがちょうどゴミの日だったのでそのままゴミ回収車に投げ入れました。その後、もっと大きな音がするようになり、大型ラット(ドブネズミ)を見かけました。さすがに「ごきぶりホイホイ」に収まるしろものではないので、今度は本格的なネバネバのネズミ取りを仕掛けました。翌朝、巨大なネズミが歯をむいて「ギャーギャー」を威嚇していました。「チューチュー」でななく「ギャーギャー」ですよ。さすがにちょっとたじろぎましたが、これまたゴミ回収車に投入しました。
江差をまるで田舎あつかいに書いてしまいましたが、なかなかモダンな喫茶店もありました。そこのチョコレートパフェが絶品でしたが、まだ2才にもならない長女に気づいた垢抜けたマダム的な店主が「まことに恐れ入りますが小さなお子様にはまだ早いかと存じます」と忠告してくれました。やっぱり田舎だったかな・・・。でも江差は好きでした。