佐野理事長ブログ カーブ

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第20回 忙酔敬語 肩こりから来る下腹部痛 

42歳のAさんが原因不明の下腹部痛のため内科から紹介されてきました。内科の検査でも泌尿器科の検査でも異常はないというのです。2週間前から痛みを自覚するようになり、最近では痛くて仕事にも支障をきたすようになりました。前回お話しした「骨盤内うっ血症候群」かなと思って診察しましたが、骨盤の内側には痛みはなく、左下腹部の腹壁にピンポイントで痛む場所がありました。「これは鍼治療で治るな」と確信しました。
鍼治療にはいろいろな方法があります。帯広の東方鍼灸院の吉川正子先生の「陰陽太極鍼法」という講演を聴いてから、骨盤の痛みを訴える妊婦さんを中心にこの方法で治療したところ、驚くほどの効果がありました。痛みと反対側の治療点に円皮鍼といって太さ0.2mm、長さ0.6mmのごく小さな鍼の付いたシールを貼ると、たちどころに痛みはなくなるのです。先日も妊娠8か月の妊婦さんが「恥骨が痛くて歩くのがつらい」と言うので、首の後ろの身柱という穴に円皮鍼を貼ったところ、「あら、痛くない」とスタスタと歩き出したので、付き添いで来ていたご主人も「本当かよ」と信じられないようでした。
さて、Aさんですが、今までの経緯をうかがうと「この半年間で身内の死など5回も不幸があり、それから肩こりがひどくなってきた」と言うのです。そこでAさんの後ろに回って肩を触ってみたところ、右側の肩の下の方にカチンカチンの部位があり、そこを軽く押すと「気持ちが良い」と言いました。念のためノイロメーターで確認するとメーターが振れました。そこで円皮鍼を貼るとたちまち下腹部の痛みはなくなりました。肩の凝りも半減して大変喜んでもらえました。
Aさんのような例はそれほどめずらくはありません。昨年、全日本鍼灸学会北海道支部学術講演の準備のため、7月13日から8月16日までの35日間に鍼治療をした100例の患者さんについてまとめたところ、下腹部痛を訴える女性が16例いました。そのうち15例がその場で痛みはなくなりました。1人の患者さんは受診した時は痛みはなかったので、ノイロメーターで反応点を調べて円皮鍼を貼りましたが、その後は受診していないので効果は不明です。下腹部といってもいいような鼠径部の痛みの8例や、恥骨の痛みの8例のすべての患者さんもこの治療で良くなっています。
最近では吉川先生に「佐野先生は『陰陽太極鍼法』の大家です」とお墨付きをいただくようになりました。エヘン、エヘン(坂本龍馬のマネをして自慢しているのです)。