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第2回 忙酔敬語 毛利敬親

高校生のとき、日本史で明治維新を推進させた主な藩を土肥薩長と覚えされられました。土佐、肥前佐賀、薩摩、長州の4藩のことです。土佐には山内容堂、肥前佐賀には鍋島閑叟、薩摩には島津斉彬といった強烈な個性を持つ殿様がいましたが、長州は京で暴れ回ったり2度も長州征伐を受けたりして大いに世間を騒がせたのに、殿様の存在感が薄いのが気になっていました。最近、司馬遼太郎の「世に棲む日日」を読み、ようやく納得できました。この毛利敬親という殿様は定見というものがない人で、保守派と改革派の間を行ったり来たりして、家臣のいうことは何でも「そうせい」と言うので「そうせい侯」とよばれたそうです。
産婦人科のコラムなのに「あんた、何が言いたいの」と思われるかもしれません。実は「この殿様、俺とそっくりじゃん」と思ったのです。私もスタッフが「ホームページを充実させたい」と言えば「良いねえ」、「フリースタイルのために部屋の改造をしたい」「そうせい」、「助産師外来を創設したい」「そうせい」、「陣痛が本格的でないので帰しました」「そうか」、「外来の待ち時間を改善したいのでいろいろ工夫をしたい」「そうせい」等々、やる気のあるスタッフの自由な発想を喜んでいるのです。ようするに優秀なスタッフに囲まれていると自慢したいのが今回のテーマでした。しかし、リーダーシップを発揮しなければならないときは逃げないで決断するのは、毛利敬親よりはマシだと自負しています。
毛利敬親のことは清水義範氏の「偽史日本伝」という歴史パロディーの「どうにでもせい」という章にも出ています。こちらの方が手に入りやすいので、興味のある方は読んでみてください。