佐野理事長ブログ カーブ

Close

第198回 忙酔敬語  ワイルドライフ

NHKのBSプレミアムが面白い。なかでも月曜日の夜8時から放映される「ワイルドライフ」を楽しみにしています。動物の生態を中心としたドキュメンタリー番組ですが、とにかくタメになります。そのつど300円はらっても見る価値があります。私の場合、映画館での鑑賞はシルバーなので1100円、500円出しても良いのですが受信料を払っているのでこの辺が妥当かと思います。とにかくトクした気分になります。
最近、とくに良かったのは栃木県、足尾の森のツキノワグマ。明治時代、銅山の開発による公害で死の山となった足尾。昭和三十年代から人々の植林による努力の結果、生き物たちが帰って来ました。その生態系の頂点に立つのがツキノワグマです。
北海道のヒグマと違って小ぶりで愛くるしい。たまに人と遭遇してトラブルを起こすこともありますが、致命傷を負わすまでにはほとんど至らない。ただ、シカなどの死肉を食べる習性があるので、よく言われる「クマにあったら死んだふりをしろ」を実行すると、そのまま食べられてしまう恐れもあるそうです。
このように一応肉食動物ですが、摂取する食物の90%が新芽や草花といった植物です。小枝をしきりに食べている姿はまさにパンダです。竹ばかり食べるパンダもクマの仲間ですが、それほど特殊ではないんだなと実感しました。雪解けの谷間から現れる死んだシカは大事な動物蛋白源です。ふだんはアリの巣を鋭い爪でこじ開けて、アリはもちろん、もっと美味しい幼虫を一心不乱に食べています。冬には冬眠に入るので木の実などをとにかく食べて食べて食べまくります。子グマも母親のマネをして盛んに食べます。
ここでふと考えさせられます。われわれ人間は健康のためにできたら1日30種類以上の食物を摂るべきだと言われていますが、コイツラはそれどころではないよなあ。死んだシカも腐りかけているだろうし、お腹をこわさないのかねえ。人間は火を使うことで食物の幅を広げ、腐敗による食中毒などの病気からまぬがれています。
人間が初めて火で焼いた肉を食べたのはいつか? 中国では面白い伝説があります。
〈大昔のこと、豚を飼っていた男がうっかりしているうちに豚小屋が火事になり豚が焼け死んでしまった。男はガッカリしてへたり込んでしまったが気を取り直して焼け死んだ豚を食べてみたら、これが素敵に旨かった。味をしめた男は他人の豚小屋に火をつけて焼け死んだ豚を食べるようなった。さすがにとっ捕まって裁判官の前に引き出された。昔の中国には火を使う前からそんな役所があったらしい。多分ウソでしょうけど。裁判官は証拠の品を出せと焼け死んだ豚を調べてみた。指についた焼き豚の汁を舐めて、そのあまりの旨さに驚嘆した。それからは国中に豚小屋を焼く事件が頻発するようになった〉
自然に生きる動物の姿を見ていると、つくづく人間はよけいな事をしているなあと思います。食べて子供を産み育てる。ただそれだけのために健気に生きています。人間のなかでもピダハンというアマゾンの熱帯雨林に住んでいる種族は、火を使う以外はワイルドライフの動物みたいな生活をしているそうです。くわしくはネットでも調べられるので興味のある方はどうぞご覧ください。これだけでも2,3回分のブログのネタになります。
足尾の森の復活については世界に誇るべきことだと思います。よくぞここまで回復したと感激しました。そう言えば汚染にまみれた東京を流れる河川も復活して、東京湾でも江戸前の魚がとれるようになりました。まだまだ日本もすてたもんではありません。