院長ブログ カーブ

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第189回 忙酔敬語 若年女性の子宮頸がん・高年女性の子宮体がん

例年どおり、乳がん・子宮がん検診の普及啓発講演会(札幌市医師会主催、札幌市共催)が行われました。乳がん検診については札幌医大外科講座講師の九冨五郎先生、子宮がんに関してはこの私が講演しました。持ち時間はそれぞれ30分。九冨先生はさすがに現役の大学の先生だけあって、スライドを36枚以上も使って緻密な講演をされました。それに対して私は用意したスライドは実質わずかに4枚。実にユルイお話をしました。だいたい立場が違うよ。癌の研究をしたわけでもなく、今さらにわか勉強をしても聴衆の皆さんは眠くなるだけでしょう。今までの臨床経験から感じたことを率直にお話ししました。
まず、はじめに癌とはたたかわないことで有名な近藤 誠先生に登場してもらいました(もちろんスライドで)。会場には近藤先生の本を読んでいる方もけっこういました。最近、近藤先生は基本的に癌に対しては「放置」という方針をとっています。私もある意味では賛成ですが、この講演会で「近藤先生は正しい!」と言ってはぶちこわしです。近藤先生は放射線科医師の立場から一般的な治療がうまくいかなかった患者さんを多数診てこられました。ですから今さら癌とたたかっても仕方がないという信念を抱いたのではないかと説明しました。私が近藤先生のデビュー作『がん検診はやめておけ』を読んだのは20年以上も前のことです。いろいろな癌について、早期発見がいかに難しく無意味かを解説していました。ただし子宮頸がんと乳がんに関しては意義のありそうな表を載せていました。その辺のところをあらためて説明して子宮がん検診の意義を強調しました。
つぎに登場したのは在りし日の夏目雅子さんの写真。27歳の絶頂期に血液の癌である急性骨髄性白血病で亡くなりました。この癌は確かに健診のしようはありません。
「皆さん、誰でもいずれは死にます。しかし、どうせ死ぬのならこんなに美しく死にたいでしょう?」と言うと、皆さん、クスクスっと笑ってくれました。実を言うと夏目さんの死に際は当事者しか見ていないので、この発言はウソです。でも婦人科がんの最期はさんざん診てきたので、その悲惨さをお話ししました、と言うより脅しですね。「死に方にもいろいろありますが、子宮がんは出血あり、イヤなニオイのおりものあり、一気には死ねずジワジワとくるので、おすすめしません。しかし、健診で防げる癌です」
三枚目と四枚目はやっとまともなスライドで、子宮がんの分類と原因について。市で行っているのは主に子宮頸がんです。頸がんはウィルス感染が原因で若い人に増えていること、頸がんワクチンが副反応への恐怖から受ける人が激減したことは残念であるとお話ししました。子宮体がんの健診については確立した方法はないが、高齢者で出血のある人は要注意で、早めに受診すれば何とかなると説明しました。
会場には、今年、私が大学病院に紹介し、体がんの治療を受けた患者さんも来ていました。先ほどの説明とはうらはらにたった一週間の出血で受診したのに進行性の癌でした。手術を受け、現在、抗がん剤の治療を受けているとのこと。相談コーナーにも来てくれ、転移やその後の予後など相談されました。知っているかぎりざっくばらんにお話ししました。それに加えて、現在は医療も進んで癌性疼痛で苦しむことはないと断言しました。
後日、その患者さんを当院に紹介してくれた地域の保健師さんから「佐野先生から死生観などの話も聞けて良かったと言っていました」とお便りがありました。これだけでも講演した意義があったとホッとしました。