院長ブログ カーブ

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第187回 忙酔敬語 玉の海と肺塞栓症

大相撲が好きです。野球、サッカー、さらには錦織選手の活躍もほとんど興味なし。一時、野球賭博事件などで力士全員が精彩を欠いた時代はさすがに見ていられませんでしたが、今は照ノ富士の活躍で楽しんでいます。
どんなお相撲さんが好きかというと、照ノ富士のように今、現在活躍している力士が好きといった移り気で薄情な相撲ファンです。でも基本的に力強く攻撃的なタイプが好きで、白鳳や往年の大鵬のような体が柔らかく受けで勝負といった相撲はあまり好みではありません。ですから今まで見た相撲の中でもっとも印象に残った勝負といえば、怪力の琴櫻が北の富士を土俵の真ん中で押し倒した一番です。左手で回しをグッと引きつけ、喉輪で北の富士をのけぞらせ、そのまま裏返しにひっくり返したのにはしびれました。
しかし、最近の相撲を見るにつけ残念なのは、お相撲さんのほとんど全員がデブということです。当たり前ではないかと言われるかもしれませんが、デブにもほどがあります。幕内力士の平均体重が160kg。昔だったら巨漢力士です。そのため膝を痛めたりして全員どかこにテーピングをしています。相撲巧者の安美錦も体重は146㎏で、幕内力士の中ではデブの方ではありませんが、両膝の分厚いサポーターを見ていると、本当に大丈夫なんだろうかと心配になります。だいたいビジュアル的にみっともない。
その点、細身の初代貴乃花は、ほとんどテーピングをすることはなく、すがすがしい印象でした。巨漢力士相手で、本当はどこか痛かったのだと思いますが、なかなか良い感じでした。貴乃花の相撲もしなやかさが信条で、本来、私の好みではありませんが、あの体であれだけ活躍すれば文句はありません。
ここで思い出すのが、昭和四十年代に活躍した名横綱、玉の海。北の富士とともに短かったですが「北玉時代」を築きました。小兵の力士で、横綱になるまでは玉乃島と称して、ときの大関や横綱をやっつけ、大いに暴れ回りました。しかし、横綱になってからは、あまりにも強すぎてキライになってしまいました。それに対してやんちゃな北の富士はポカが多くて憎めない存在でした。玉の海のどこがイヤかと言うと、一つの型を確立して面白みがないことでした。右腕をグッと差し込み相手の腕を持ち上げ(相撲用語で、かいなを返すと言います)、左手で上手を取る。もうここで勝負あったです。玉の海に左上手を取られて勝った力士はまずいません。ああ、もうダメだ、それ以上は見るまでもなし。
当時の玉の海の体格は身長177㎝、体重130㎏。現在、幕内最軽量の日馬富士でさえ身長185㎝、体重136キロです。こんな体で向かうところ敵なしでした。
27歳の全盛期、虫垂炎の手術後に突然死しました。玉の海の死を知った北の富士は涙をポロポロ流しました。良いヤツだなと見直しました。オレだったらライバルがいなくなり、とうとうオレの天下が来たと思ったのに・・・。原因は、今で言う肺塞栓症でした。
さて、これからはやっとわが産婦人科領域の話題に入ります。現在、日本では年間約100万人のお産がありますが、お産で命を落とすお母さんはわずかに50人前後で、世界に誇れる数字です。その原因の一つが玉の海の死につながった静脈血栓塞栓症です。とくに肥満、高年齢、喫煙者の帝王切開が危険です。その予防として低分子量ヘパリン注射などの対応が確立されています。玉の海もこんな治療を受けていたら助かったのになあ、と思ったことでした。