院長ブログ カーブ

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第185回 忙酔敬語 ナイスガイの育て方

前回、子供の教育について述べましたが、二人の男の子を持つ助産師Sさんは納得いかない様子。
「ナイスガイとはどういうことですか? そしてどう育てればナイスガイになれるんですか?」と食い下がられました。
そもそも紙っぺら1ページで子育てについて語るのが無謀でした。そして私の子供は娘二人で男の子を育てた経験はありません。何か泥沼にはまってきたな、と後悔しましたが今さら逃げるわけにもいきません。
私がナイスガイという言葉を意識するようになったのは、今は廃刊された写真週刊誌『FOCUS』の記事を読んでからでした。新日本プロレス主催の王者決定戦で、アントニオ猪木がハルクホーガンにKOされてリング下に転落してほとんど失神状態。それを心配そうに見下ろしているハルクホーガンの写真が掲載されていました。そんなハルクホーガンの姿を解説ではナイスガイと称していました。
それにひきかえ、私は北海道の3大学医学部の柔道交流戦で旭川医大の選手を内股で投げて一本取り、その際、相手の肩を脱臼させたのにもかかわらず、ただ勝った勝ったと喜んでいました。先輩に「佐野、ちゃんと謝ってこい」と注意されましたが、笑いながら「スイマセン、大丈夫ですか?」と形ばかりの挨拶で、心がこもっていませんでした。その後もひょうきんな旭川医大の選手は、私の顔を見るたびに肩に手を当てて「痛い痛い」と訴えていましたが、私はただニヤニヤしているばかり。だからハルクホーガンのナイスガイぶりに感心したのでした。
アメリカは人種のるつぼで、イヤなヤツもいれば良いヤツもワンサカいます。昔、小型飛行機が池に墜落した事故がありました。その乗客の一人の男性が、溺れかけた何人もの女性を泳いで岸辺に連れて行ったあげく、自分自身は溺れ死んでしまいました。こうした英雄的行為はアメリカ人の美徳とすることで珍しくはありません。日本では皆無とは言えませんが、めったにないことです。ナイスガイという英語、日本語では「良いヤツ」と表現できますがナイスガイの方がしっくりします。
郷久理事長の次男が幼少のみぎり、運動会で一緒に走った子が転んだとき、走るのを止めて手を差し伸べて、それから再び走りました。当然ほとんどビリです。その話をうかがったとき「お子さんは、もう、人生の目標に達しましたね!」と感嘆しました。
診療をしていると、予期しない妊娠で受診する十代の女性が来ます。そんなとき私がよく言う言葉。
「彼はどうしている? 喜んでくれたら本物、逃げたらダメなヤツだからもう付き合わない方が良いぞ」
以上、ナイスガイとは自分の損得を考えないで他人を思いやる男のことです。自分の子が損な立場になるのは親として見るに忍びないかもしれませんが、長い目で見ればナイスガイは人に慕われて幸せになれるケースが多いものです。
さて、ナイスガイを育てるには、そんなカッコイイ行為をした子供をただひたする賞賛し、誇りに思うことです。無理して勉強して形ばかりの出世をしても幸福になるとは限りません。この辺の感性が親にとって大切なことだと思います。