院長ブログ カーブ

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第178回 忙酔敬語 緊急避妊

何かのはずみでノーガードでセックスしたりコンドームが破れてしまったと言って緊急避妊をもとめて受診する女性が増えています。こうした緊急避妊の知識はしだいに広まりつつあり、「中出ししなかったから大丈夫」という迷信が減っているのは良いことです。
一般に行われているのはホルモン剤の処方です。ノルレボという緊急避妊のために開発された薬を2錠飲みます。ただそれだけです。ただし有効期限は72時間以内、すなわち3日以内です。5日でもOKとされていますが、メーカーは72時間以内での使用をすすめています。人によっては吐き気がして、なかには実際に吐いてしまうこともあります。薬は2時間で胃を通過するので2時間以上たっていれば大丈夫。2時間以内だったらまた処方してもらわなければなりません。どうして吐き気が生じるかというと、まあ、悪阻(つわり)のようなものだと言ったら理解いただけるでしょうか。ですからお産を経験されていて、悪阻で苦しむことはなかったという女性には最適です。
さて、値段の問題。これが大きなネックです。ノルレボの1回の仕入れ価格が7,8千円と言われています。ですから実際に処方される場合は軽く1万円以上はします。あいまいな書き方をしているのは、当院では採用していないからです。以前から行われていたプラノバールというホルモン剤を1回2錠、さらに12時間後に2錠飲んでもらいます。これでも値段はノルレボの3分の1以下です。効果はノルレボよりも劣るとされていますが、それほど大きな差はないようです。吐き気もノルレボよりも頻度が高いようですが、吐き気止めを一緒に処方することで、ほとんど何とかなっています。
3日、あるいは5日以上たっている場合はどうするか? 家族計画協会では銅附き避妊リングの使用を奨励しています。値段は施設によって違いますが、3~5万円程度です。これで2年から5年の間、避妊効果があるので、ものは考えようです。避妊効果はやや劣りますが銅附きでなくてもかまいません。プラスチックだけのリングは入れる手間がとてもラクで、入れられる方も痛みはそれほど感じません。ただし、銅附きでも銅なしでも共通しているのが、生理の量が増えたり、生理の期間が長引いたりすることです。生理痛が強くなることがあります。
そこで登場したのが黄体ホルモン附きのリング、ミレーナです。ミレーナを装着すると生理は低用量ピルなみに少なくなり、生理痛もラクになります。ただし、先ほどのリングと比べて挿入器具が太いので工夫が必要です。値段も8万円以上とベラボウに高い。そして入れる時期によっては不正出血が続きます。理想的な時期は生理の終わりころです。これでも2,3か月の間、少量ですが出血が続くことがあります。私はこのミレーナを緊急避妊として使用したことがありますが、やはり2か月ほど出血が続きました。でもその後は生理もラクになったと喜んでいただけました。
緊急避妊はあくまでも緊急で、ふだんから低用量ピルやコンドームを使用する習慣を身につけてください。年に何回も緊急避妊薬を処方する女性に「いいかげんにピルを飲んだらどうですか」と説得しましたが、言葉をにごして帰ってしまったのは残念でした。低用量ピルや正しいコンドームの使用は緊急避妊よりも確実に妊娠率を下げます。当院ではホルモン剤の緊急避妊の価格を低く設定しているので、こうした安易な行動の原因になっているのかもしれません。もっと値上げすべきかどうか・・・?、思案のしどころです。