佐野理事長ブログ カーブ

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第170回 忙酔敬語 緑の国

30年前にオーストラリアのメルボルンで国際女性心身医学会が開催されました。それに参加すべく長いフライトの旅をしました。やっと搭乗機がオーストラリア大陸の上空に達したので広大な大地をつくづくとながめました。いつまでたっても延々と続く赤茶色の砂漠。何時間も何時間も延々と・・・・。
「こんな土地だったらいらないな」
日本にも自分の土地を持っていないくせに思いました。今でも持ってないけれど。
それ以来、肥満に悩む患者さんが、
「そんなに食べてないのにやせないんです」と言うたびに、
「オーストラリアのど真ん中に2週間暮らしてごらん。絶対やせるから」
と実現不可能なアドバイスをくり返すようになりました。
何で今さらこんなことを話題に出したのかというと、私は『ワイルドライフ』などの自然物のテレビ番組が大好きです。その中で最近気になったのが、オーストラリアの動物を紹介するときの「豊かな自然」という言葉。「雄大な自然」なら納得ですが、「豊か」はないなあと思うのです。
冒頭のオーストラリアの風景でも紹介したように、オーストラリア大陸の半分近くが砂漠で、緑の部分は日本と比べ、はるかに及びません。国内線の飛行機からの日本の風景は、ほとんど山地ですが、とにかく都市部以外は緑で埋めつくされています。
子供のとき、社会科で日本の国土の7割が山地なので3割くらいしか農業に利用できないとマイナスのイメージで教わりました。確かに山地がないオランダは国土が狭いにもかかわらず農業大国です。しかし山地の緑はけして無駄ではありません。森林から大量のミネラルが川に流れて海を豊かにし、漁業に貢献しています。また、ただ存在するだけで大気中の二酸化炭素を吸収して地球温暖化の歯止めとなっています。
日本の自然はこのように本当は豊かなので、国土の狭いわりに古代から人口が多かったようです。さらに大陸からの移民を受け入れるユトリもあり、稲作や文化の発展の原動力になりました。江戸時代になると各藩とも林業や農業を大切にしたため、人口は三千万くらいにまでなりました。
それに対してオーストラリアは基本的に水不足なので、どうあがいても二千万程度の人口しか養えないそうです。
アフリカ東部の島国マダガスカルでは森林破壊が問題になっています。焼き畑や薪のために8割が消失しているそうです。マダガスカルの一人当たりの米の消費量は世界一で、気の毒なことにこんなことをしなければ今、現在を生きていけません。地形図を見ても明らかなように砂漠もあり、オーストラリア大陸の縮図のようです。それでも雨期があるので水は何とか確保でき、人口もオーストラリアなみの二千万。しかし、このまま森林を食いつくしたら人口の減少は目に見えています。
さいわいにも日本の森林は、ほとんど山地なのでマダガスカルのような急激な伐採はできませんが、近年、林業がふるわなくなるにつれ手入れが悪くなり、質、量ともだんだんジリ貧になってきました。本来、日本は真の緑の国です。まるで詐欺のような国名の「グリーンランド」とは違います。将来を見すえて緑を大切にしなければなりません。