院長ブログ カーブ

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第164回 忙酔敬語 なぜ赤ちゃんは赤いのか?

小児科の常勤医師がいなかったころ、新生児黄疸の説明をするのは私の役目でした。
「どうして赤ちゃんが黄色くなるのか? これには深いワケがあります。そもそも何で赤ちゃんというのか? 話は二十億年以上前の地球にさかのぼります」
「この医者、何が言いたいんだろう」とお母さんはキョトンとした顔。
「またかぁ・・・」とスタッフはあきれ顔。
「生物が誕生したころ、地球の大気は窒素と二酸化炭素ばかりで酸素はありませんでした。しかし、原始的な植物が光合成をするようになってから酸素が産生され大気に放出されるようになりました。酸素は体に良いと思っていませんか? 実は毒なんですよ。活性酸素って聞いたことがあるでしょう? そう、体を老化されてボロボロにするヤツです。植物は発生した酸素の毒から身を守るため解毒作用のあるビタミンCやビタミンAを大量に合成しました。だから黄緑色野菜にはビタミンが多いんです。飲み物や食品の添加物を見ると、よくアスコルビン酸って書いてるでしょ。アスコルビン酸はビタミンCのことで食品の酸化を防ぐために入ってるんです。別に栄養を強化するためではないんですよ」
※このビタミンCの解毒作用は酸素のみならず塩素にも作用して、岡本信明・川田洋之助著『どんぶり金魚の楽しみ方』(池田書店)によると、どんぶりに入れた水道水にビタミンCのアメ玉をひたして何回かこするだけで、あっという間に塩素がなくなり金魚が快適に住める水になるそうです。これは最近知った話。
「さて、いきなり話が外れてしまいました。本題に戻りましょう。赤ちゃんが赤いワケでしたね。生物が生きるためのエネルギーを生産するのにはご存じのように酸素が必要です。細胞の中のミトコンドリアという器官で、ブドウ糖が酸素と結合して二酸化炭素と水に分解されてエネルギーが生産されます。その酸素を取り入れるのに必要なのが赤血球です。大人は呼吸によって大気中の酸素を取り入れることができますが、赤ちゃんは胎盤を通してお母さんの血中から間接的に酸素を取り入れます。大人なみの赤血球数だと十分に酸素を取り入れることはできません。そのため赤ちゃんの赤血球数は大人の2,3割増しになっていて血の気が多いんです。だから赤いのです。血の気の多いのは元気な証拠と思いきや、必要以上の酸素が取り入れることになります。さっき話したように酸素は毒です。そのため余分な赤血球は分解されます。分解された赤血球の中の血色素は肝臓で処理されて直接ビリルビンという黄色い物質に変えられます。赤ちゃんだけでなく大人でも古くなった赤血球は分解されて肝臓で処理されて直接ビリルビンとなり便に混じって排泄されます。肝臓が悪くなるとビリルビンが体にたまって黄疸になります。黄疸の人の便はビリルビンが少ないので白いんです。赤ちゃんの便は濃い緑でしょ? だから別に肝臓が悪いというワケではありません。でも原料となる血色素が多いためビリルビンは処理しきれず体に残ります。ビリルビンが一定以上多くなると赤ちゃんの健康に害をおよぼすことがあります。それで前もって治療をするワケです。これから光線療法をしますが、光線療法が確立したきっかけは‥‥ウンヌンカンヌン‥‥」
たまに小児科の笹島先生が不在のとき、私が説明することがありますが、
「そもそもなぜ赤ちゃんは赤いのか」と言った時点でスタッフからストップがかかります。欲求不満だなあ。