院長ブログ カーブ

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第160回 忙酔敬語 さじ加減

「さじ加減」について近ごろ考えるところがあったので、とりあえずネットで調べたらつぎのような説明が書かれていました。

1.さじに物を盛る加減。特に、薬を調合するときの分量の加減。
2.料理の味つけの程度・ぐあい。「ちょうどよい─」
3.手加減。手ごころ。「上司の─ひとつでどうにでもなる」「─を誤る」

私が考えたのはもちろん「1」についてです。きっかけは不安や「うつ」に使われるSSRIの新薬レクサプロのうたい文句。製薬会社の営業マンいわく、
「1錠から始めて不十分なら2錠、それでOKです」
「40㎏のやせっぽっちでも80㎏のデブでも同じ量で良いってことかい?」
「そのとおりです」
そんなバカなことってあるものかと思いました。小児科では薬物は体重に応じて調整しています。よく訊くと副作用は用量に関係するとのこと。それ見たことかと思いました。
円山公園メンタルクリニックの白木淳子先生によると、SSRIを飲んだことがない患者さんは半錠から始めた方が良いそうです。いきなり1錠飲むと吐き気などの副作用が生じるからです。そうなると、もともと不安感が強い患者さんですから拒否反応を起こして二度と飲みたがりません。私も白木先生の忠告にしたがって使っていますが、なかなか良い方法だと思っています。量の調整も1錠か2錠でなく、0.5錠、1錠、1.5錠、2錠と4段階に加減した方が無難です。レクサプロでも「さじ加減」は必要です。さらに白木先生は患者さんの時々の状態に応じて1錠にしたり2錠にしたりして調整しているとのこと。
その点、下剤のマグラックスは200mg、250mg、300mg、330mg、400mg、500mgと5種類の錠剤の他に粉薬まであり、いたれりつくせりです。
SSRIの話題にもどります。現在一番使われているパキシルについて。パキシルは1日10mgあるいは20mgから始めて効果が出るまで最高40mgまで1週間毎に増量します。錠剤は10mgと20mgの2種類です。その後、改良型のパキシルCR錠12.5mgと25mgが出ていますが、とにかく使いづらく好きではありませんでした。しかし減量するための5mgの錠剤が出るにおよんで微妙な調整が可能となり、ちょっぴり好きになりました。
漢方のテキストを読むと、それぞれの処方の基本的な配合が書かれていますが、患者さんの状態に合わせて、生薬を調整するように解説しています。医療用の漢方のエキス剤は基本的な処方のままなので自在に調整することはできません。かろうじてコウジン末やブシ末などは足すことはできますが引き算は無理です。いや、二つあったぞ。各メーカーから大柴胡湯をいう処方が販売されていますが、瀉下作用のある大黄を引いた大柴胡湯去大黄がコタローから、葛根湯から動悸をきたす麻黄を引いた桂枝加葛根湯が東洋薬行から販売されています。
ある高名な先生が、東洋医学学会で、苓桂朮甘湯を使って便秘になった患者さんを紹介していました。他の症状は良くなったのに不思議だという内容でした。使用した薬はエキス剤で調整がつきません。麻子仁などを加えれば良いのにと思ったことでした。