院長ブログ カーブ

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第147回 忙酔敬語 安くなったミレーナ

9月2日から避妊用器具ミレーナが保険で利用できるようになりました。適応症は月経過多です。月経困難症でもOKとなるようです。
避妊用器具とはいわゆるリングのことで、子宮内に挿入することで避妊効果を発揮します。昔はプラスチックが主流でしたが、銅附きのリングが登場し、さらに避妊効果がアップしました。ただし日本では厚労省がなかなか認可せず、名誉なことに(もちろん皮肉です)北朝鮮とともに世界で最後に使用できる国となりました。
その後、黄体ホルモン附きのリングが登場。それがミレーナです。避妊効果はさらにアップして低用量ピルに勝るとも劣らないレベルにまで達しました。さらに副効用として生理の量が減り、生理痛も減少するという結構ずくめな製品でした。
しかし、値段がべらぼうに高い。それまでのリングが3万円台なのに対して何と8万円以上! メーカー(バイエル)の営業マンは「東京では盛んに使われています」とけしかけましたが、札幌にはそんなにお金持ちはいません。当院でも何本か用意しましたが、めったに使うことはないため使用期限が過ぎて2本処分するハメとなりました。
ところが先ほどお話ししたように、厚労省から認可が下りて保険で格安の価格で利用できることとなりました。
以前、避妊用の低用量ピルも「月経困難症」で保健適応の認可が下りたことがありました。患者さんの負担はさぞかし減るだろうと期待しましたが、もともとの価格を高く設定されたため、3割負担でも従来の低用量ピルとほとんど同じという結果になりました。
ところがミレーナは、手技量も含めて1万円くらいで装着できることとなりました。今までの卸価格は何だったんでしょうね。いろいろ憶測しましたがとにかく結構なことです。挿入後は5年間有効なので、避妊方法としてはダントツに低価格です。メーカーの営業マンは「病院さんにとって大した利ざやはありませんが」と恐縮した顔をしましたが、「医療者は理想主義的な思想がないとイカンのだ」とカッコイイことを言って胸を張ってみせました。
さて、良いことずくめのミレーナですがいくつか問題があります(不正出血などの副作用はツイッターによる書き込みがワンサカあるので、それを参照してください)。
挿入操作が面倒で挿入器具の直径が太いことです。挿入操作はメーカーが用意してくれる練習用のキットで何とかなりますが、太いのは患者さんの負担になります。お産が終わったばかりだと問題はありませんが、未産婦さんだとかなり苦痛になります。中には子宮口を急に広げることで迷走神経反射が起こり血圧が下がって意識を失うこともあります。
そこで裏技として使えるのがサイトテックという鎮痛剤による胃潰瘍のための胃薬。これを挿入30分前に2錠舌下すると子宮口が柔らかくなり挿入が容易になります。さらにヘガールという頚管拡張器を併用すると間違いありません。ただしこのサイトテック、子宮を収縮させる作用があるので生理痛のような痛みが生じます(したがって生理痛のために鎮痛剤と一緒に飲むのはアホかいなです)。とくに筋腫や腺筋症のある患者さんは痛みのため転げ回るハメとなります。もっともこのように子宮の大きくなった患者さんにミレーナを入れてもすぐ脱落するので役にたたないでしょうけど。
以上、安くなったミレーナに対する私見を述べてみました。