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第146回 忙酔敬語 更年期障害にはワケがある 

先月、札幌市産婦人科医会の学術講演会で、大阪樟蔭女子大学の甲村弘子先生が『女性のストレス疾患への対応─女性心身医学の視点から─』という演題でお話しくださいました。
その中でも「うつ病をきたした要因」として、「夫との関係」が27%とダントツでトップなのにはなるほどと大いに納得しました。続いて「仕事のストレス」と「介護」がそれぞれ17%、「退職」10%、「子供の自立」と「健康の不安」が8%、「離婚、別居」と「引っ越し」5%でした。
いわゆる更年期障害には「うつ病」もひそんでいますが、「うつ病」にもこんなにワケがあるのです。
ホットフラッシュや発汗といった典型的な更年期障害にはホルモン補充療法が効きますが、こうしたケースは更年期障害と思って受診した患者さんの半分にもなりません。ホルモン不足もワケの一つですが、ホルモンが効かない患者さんにはその他のワケを探さなければなりません。
その方法として、甲村先生は「医療面接」について解説してくださいました。傾聴、受容、共感的理解、要約と確認。甲村先生はもともと産婦人科医なので、一般的な産婦人科外来の多忙さを重々承知しています。したがって集まった産婦人科医たちには難しかろうと、ちょっと気の毒そうな表情でお話しになりました。
そこで思い出したのが精神科医の成田善弘先生のお言葉。10年以上も前に、雑誌『臨床心理学』(2002. Vol.2 No.1)に書いていました。
患者さんの話をただきいているだけではダメ。不思議に思えることは必ず質問して確認しなければいけないというのです。
〈かって私の外来に陪席していたある心理臨床家からこういうことをきいた。外来に若い女性の患者がやってきて、「ボーイフレンドと別れて、手首を切った」と言った。私が「どうして手首を切ったのですか?」と問い返した。患者が「とても気持ちが混乱して生きていても仕方がないと思えて」と言ったら、私が「どうしてそんなに混乱したのでしょうか?」とまた問い返したという。陪席していた臨床家たちはあとで、「失恋して気持ちが混乱して手首を切るのはよくわかる。成田はどうしてそんなわかりきったことをきくのだろうか」と語りあったという。私には不思議に思えたことを彼らは不思議に思えなかったのである。ふつう「失恋したら手首を切る」だろうか? 「気持ちが混乱して生きていても仕方ない」と思うところまではゆかないであろうし、ましてや手首は切らないであろう。‥‥。
患者は弱くて無力な存在だから、そういう患者に質問するのは酷だ」と感じている治療者がいる。しかしこういう治療者にかかっていては、患者は自己探求する必要が生じないので、自分の問題に気づくことは少ないであろう。〉
面接の場でこのように積極的な姿勢で臨むと問題は早く見えてくるものです。ただし、質問の仕方にもテクニックがあり、警察の尋問のようになっては患者さんを傷つけかねないので注意が必要です。私も時に暴走して患者さんを泣かせてしまうことがありました。 どんな場合でも「思いやり」が背景になければならないと自戒しています。