院長ブログ カーブ

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第124回 忙酔敬語 喫煙

当院は6年も前から敷地内禁煙です。そのため本人はもちろん、ご主人など身近な人が吸っていればニオイで分かります。一日に一箱以上吸っている患者さんを目の前にすると不快なニオイでクラクラしてきます。今度受診したら「受診当日はお願いだからヤメテ!」と懇願しようかと思っています。
昔は男性の喫煙は当たり前なことで、私の父もスパスパやっていましたが、慣れとは恐ろしいのもでちっとも不快ではありませんでした。水洗トイレが普及していない時代は、父のトイレの後は煙草の香りで糞尿の刺激臭が緩和されてむしろイイ感じでした。
私が小学生の時分はゴジラの映画シリーズの全盛期で、ゴジラが口から放射能の煙を吐くシーンにしびれていました。そんなもんで自分も煙を吐きたくなり、家族がいないときにこっそり灰皿にある吸い殻に火をつけて禁じられた遊びをしたものでした。小学6年生のころ、カゼの治りが悪いためレントゲン写真を撮られたことがありました。その時、お医者さんが「子供にしては肺がくもっていますね」が言ったのにはギクッとしました。今から思えばただ吹かしただけで肺まで吸い込んだわけではなのですが、あの時はあせりましたね(吹かす方がもっとカラダに悪いという説もあります)。
高校生になると寮で喫煙するヤツが現れはじめました。私は父が煙草が切れると「死ぬ死ぬ」と言って醜態をさらすのを見ていたので、本格的に吸う気にはなれず仲間には入りませんでした。また、「オレなんか小学生のときからやってたんだからな」という妙な自負がありました。
喫煙は慣れるまでは訓練が必要です。生まれて初めての一服から「ウマイ!」と言う人はめったにいません。妊娠中は禁煙を頑張っていたのに、産後、気が緩んで久しぶりに一服吸ったお母さんに訊いてみても「ひどく不味かった」と言います。そこでやめておけばいいのにね。何で変なところで頑張ってしまうんでしょう。やっぱりストレスが原因なのですかねえ。私なぞは意志が弱く、何度か喫煙にチャレンジしたのですが、気がついてみたら吸うのを忘れ、とうとう現在にいたってしまいました。
喫煙が「害」だということは常識になっていますが、コロンブスのアメリカ大陸発見以来、梅毒にも負けないスピードで普及したのにはワケがあるはずです。そんなことを考えていたら名取晴彦・上杉正幸『タバコ有害論に異議あり!』(羊泉社新書)という本を見つけました。冒頭、運転中にタバコを切らしたためイライラして交通事故を起こした事例をあげ、要するに喫煙には精神安定作用があるという内容でした。そう言えば「酒の上でのケンカ」はあるのに「タバコの上でのケンカ」というのはあまり聞いたことがありません。また、西部劇で、平和の証としてインディアン(現在では先住民と言わなければいけないそうです)がタバコをのみかわしているシーンを見た覚えがあります。
しかし実際に無煙の状態が続くとタバコは毒だというのは、カラダが反応してしまいます。タバコが西洋人に発見された大航海時代には、タバコは百薬の長と信じられていました。『ロビンソン・クルーソー』でも主人公が発熱で倒れたとき、野生のタバコを大量にふかして病気は癒えますが、その後、何日間もタバコの毒性のため苦しむ場面があります。ストレス解消のための喫煙はしかたないとしても、少なくてもニオイくらいは何とかして、他人(私のこと)に迷惑をかけるのはやめてもらいたいものです。