院長ブログ カーブ

Close

第122回 忙酔敬語 出生前診断から出生前検査へ 

母体の血液検査で胎児の染色体異常が分かるとされる「出生前診断」が施行されてから1年以上たちました。これまで8000人もの妊婦さんがこの検査を受けたそうですが、カウンセリングの不備などいろいろな問題が取りざたされています。私も2,3言いたいことがあるのですが、ブツギをかもし出しそうなので今回は用語に対する説明にとどめておきます。何か奥歯に物のはさまったような言い方ですが、ブログに書こうかなとスタッフや先輩の先生に相談したところ、「それはやめたほうがいい」と言うので、やっぱり書かないことにしました。でも、いつか誰かに話してみたいなあ。
昨年の3月、新しい出生前診断に関しての勉強会がありました。私の前座から始まり、札幌KKR医療センターの涌井之雄先生の実際の現場での染色体検査などのお話、北大で遺伝相談にたずさわっている山田崇弘先生の今回の検査についてのくわしい解説、そして、臨床遺伝がご専門の横浜市立大学医学部附属病院院長の平原史樹先生の特別講演が行われました。数日後から「出生前診断」が施行されるのでタイムリーな企画で、多くの参加者があり盛り上がりました。
その際、気になったのが平原先生の「シュッショウゼンシンダン」という言葉。開会の挨拶から山田先生までは「シュッセイゼンシンダン」でした。
質問コーナーで私はさっそく手を挙げて質問しました。こういった重箱のスミをつつくような質問は若い先生はあまりやりたがらないのでスレッカラシの私の役目です。平原先生は、ちょっと戸惑ったようでしたが、山田先生が、「NHKのアナウンサーはシュッショウゼンシンダンと言ってますよ」と教えてくれました。翌日からNHKのニュースを注意して見ていると、確かに「シュッショウゼンシンダン」と言っていました。産婦人科学会では当初は「シュッセイゼンシンダン」が優勢でしたが、NHKにはかないませんね。
「診断」という言葉には「確定診断」という意味合いが含まれています。血液での検査は異常が出たら、確認のため羊水検査が必要となるので「確定診断」とは言えません。そのため、その頃から「出生前検査」と呼ぶようになり、最近ではNHKでも「出生前検査」と言っています。
さて、「出生前検査」の読みですが、NHKのアナウンサーは「ショッショウまえケンサ」と言っています。私はこれが気になってしかたがありません。「シュッショウ」でも「シュッセイ」でもかまいませんが、「まえ」はいけません。月経前症候群についても患者さんが「ゲッケイまえショウコウグン」と言ったときは、いちいち「ゲッケイゼンショウコウグンですよ」と訂正しています。
漢字の読みは「重箱読み」といって音読みと訓読みの組み合わせがありますが、原則的に規範的な読み方ではありません。重箱(ジュウばこ)の他にも番組(バンぐみ)、本屋(ホンや)、本棚(ホンだな)など日本語として定着した言葉はしかたがありませんが、新参者の「出生前検査」に対して「シュッショウまえ」は異和感を覚えます。
高島俊雄先生のエッセイ集『本が好き、悪口言うのはもっと好き』には「いやじゃありませんかまぜ書きは」という新聞の好きでない言葉に関しての文が載っています。破たん、はく製、黙とう、復しゅう、ら致、・・・・・・。当用漢字しか使用しないための無様な結果です。書き方もそうですが、読み方も「まぜ読み」はやめてもらいたいものです。