佐野理事長ブログ カーブ

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第12回 忙酔敬語 心療内科と精神科の違い

当院は、産科、婦人科、小児科に加えて心療内科も標榜しています。心療内科では心身症の患者さんが対象になります。精神的な問題で悩んでいる患者さんは精神科で診てもらわなければなりません。
心身症というのは、「こころの病気」ではなく、心理的・環境的なストレスによる「からだの病気」です。この辺のところがよく認識されず、医学生や心理の学生、また、研修医に「心療内科と精神科の違いは?」と訊いても、たいてい首をかしげます。ただ一人だけ「心身症は身体疾患です」と答えてくれたのは、医学部の女子学生でした。そのKさんは2年前に当院での実習を希望して来ました。まだ5年目の学生さんでしたが、すでに女医さんとしての風格がありました。牛乳の好きな娘さんでした。
心療内科では一つの診療科ですべての心身症を診るわけではありません。身体疾患ですから、内科や整形外科、耳鼻科など各領域の心身症があります。内科では、喘息、過敏性大腸炎、高血圧や胃潰瘍の一部などがあります。当院ではほんとうは、「心療産婦人科」と標榜したかったのですが、厚生省は心身症の患者さんを治療をする場合、「心療内科」としか認可しなかったため、ややこしいことになりました。
産婦人科の心身症では、まず、更年期障害が一般に知られています。その他、月経不順や無月経、生理痛、検査では異常を認めない下腹部痛(骨盤内うっ血症候群)、生理前の体調不良(月経前症候群)などがあります。これらの患者さんは子宮や卵巣、あるいはホルモンの異常を心配して受診するので、患者さんみずから「心身症の治療をしてください」と言って受診することはまずありえません。いろいろお話を訊いて生活の状況を確認したり、検査でその症状に相当するような結果が出ないとき、はじめて心身症と診断されるのです。いま述べた産婦人科領域の心身症については、いずれこのコラムでも述べるつもりです。
うつ病は本来、精神科であつかう病気ですが、心身症と密接な関係を持っている場合があります。更年期障害の患者さんのなかには、うつ病が2割くらいいます。つわりの時期には16%の妊婦さんが抑うつ状態になるといわれています。下腹部が痛いと訴える患者さんが実はうつ病が原因だったということもあります。こうした身体症状が前面に現れるうつ病を、「仮面うつ病」といっていた時期もありました。しかし、よく患者さんのお話を訊けば、うつ病と診断するのはそれほど難しいことではありません。仮面、あるいはサングラスをかけた治療者が見抜けなかっただけで、最近では「軽症うつ病」とされるようになりました。
私はもともとは精神科になりたかったので、うつ病の患者さんやパニック障害の患者さんの治療はキライではありません。また、うつ病で苦しんでいる患者さんは最近の不況にともないかなり増加しており(ちなみに英語では不景気もうつ病も depression といいます)、精神科の先生だけでは手におえない状態なので、重症でなければ、できるだけ診療することにしています。しかし、頭痛や胃腸障害で悩んでいて、「心療内科」の治療を希望する患者さんには、やはり脳外科や内科で心療内科を診ている病院を紹介していることにしています。