院長ブログ カーブ

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第112回 忙酔敬語 マニュアル言葉 

自宅にある本がたまってきたので、もう読みそうもない本を40冊ばかりブックオフ屯田店に売りに行きました。対応してくれたのはまだ二十になるかならないかの小柄で可愛らしい女の子。「こんなネエちゃんに本の値段がつけられるのかなあ」。バブルが崩壊する前は、ブックオフは新品の本なら4分の1で引き取ってくれ、半値で売っていました。売った本がまた読みたくなり半値で買い戻し、再度4分の1で売ったこともありました。今は本を読む人も少なくなり、どんな本を売っても二束三文。期待しないで店内をブラブラしていたら5分もしないうちに呼び出されました。やっぱり値段は1600円ちょっと。紙くずとして捨てるよりもマシかと思いましたが、女の子の対応がテキパキしていたので気分はそれほど悪くなりませんでした。われながら女の子には甘いねえ。「免許証などよろしかったですか」と例のマニュアル言葉を使いまくりでしたが、こんな若い子に自分の言葉で対応しろと言うのは無理な相談です。マニュアル言葉も悪くないぞと思いました。
私が尊敬するお言葉オジさんこと高島俊雄先生は気にくわない言葉に出くわすと憤怒逆上するコワイ人です。
〈・・・小生のほうはちかごろ、食い物屋の「以上ですか?」にフンガイしている。
‥‥‥。
「カツドン」と言うと、注文とりの若い娘が伝票に書いて、「以上ですか」と言う。意味が分からず「えっ?」と言ったら、もう一度「以上ですか」をくりかえした。
「カツドン一つじゃ気にくわんのか」と言ったらブスッとして行ってしまった。
その後何度も出くわした。男女を問わないが若いやつにきまっているようである。「カレーライス一つ」と注文すると紙に書いて、「以上ですか」と言う。不愉快だからその度に何か言ってやる。「お前んとこはカレーライス以下というものもあるのか」とか何とか。無論そういう店は二度と行かない。‥‥‥。〉やれやれ、「お前んとこ」ときたよ。
先生、お腹立ちは分かりますが、それではまるでヤクザじゃないですか。
当院は、患者さんの呼び出しや電話の応対など個人の自由に任せています。一度、郷久理事長に「言葉づかいをある程度統一した方が良いのではありませんか?」と提案したことがありましたが、「本人の真心から出た言葉の方が大事だよ」と言われ、「なるほど、さすが郷久先生」と意見を撤回しました。そのため、患者さんを呼ぶとき、「○○さん」と「○○様」が飛び交いましたが、昨年から番号制にしたのでそんな珍現象はなくなりました。今となってはちょっと寂しい気もします。
しかし、北海道人の宿命か、敬語に対する感覚が鈍く、患者さんからの電話の問い合わせに対して「佐野先生は明日出ていらっしゃいます」と説明するスタッフもいます。「おいおい、俺を尊敬してくれるのはありがたいけど、それではちょっと恥ずかしいぞ」と、私もときどきお言葉オジさんになって注意します。
その点、天使病院の小児科のH先生にはいつも感心させられていました。南部先生が天使から当院に来て間もなく、状態の悪い赤ちゃんを搬送したとき、「ご紹介ありがとうございます。また、南部が大変お世話になっております」と頭を下げられました。
今の若い人にここまで期待するのは無理ですね。マニュアル言葉もしかたないなと妥協する今日このごろです。