院長ブログ カーブ

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第110回 忙酔敬語 報道の自由とウケル報道

札幌市医師会北区第6班(屯田、太平、篠路、茨戸、拓北、百合が原、あいの里)の寄り合いのことでした。宴もたけなわ、多くの医者たちの酔いも回ってきたころ、私と高校が同期の内科医が、「マスコミは日本人の糖尿病が増えたと騒ぎ立てるのに、(内科医の努力で)糖尿病予備軍は減っていることに関しては何も書いていない」と憤慨していました。それに対してノンアルコールビールでシラフの私は、「ウケル内容じゃないとマスコミは書かないよ」としたり顔で口をはさみました。と言うのは、私がある新聞の健康相談の取材を受けた時のことを思い出したからです。
64歳の女性の不定愁訴の質問について回答の原稿を書いたところ、後日、取材に来た記者さんは、「えっ?、更年期障害じゃないんですか」と困惑した様子を見せました。どうも更年期障害じゃなければ読者の目を引くことは難しいらしい。
そう言えば、昨年の札幌市の家庭医学講座で、「女性のメンタルケア」というタイトルで講演しようとしたところ、「更年期」という言葉をつけないと人は集まらないということで「更年期のメンタルケア」にさせられたことがあったぞ。
結局、新聞には以下の記事が掲載されました。
〈 「更年期障害の症状が長く続く」
Q 64歳女性、50歳くらいから更年期障害の症状が続き年々体力も衰え、つらい日々を送っています。ふらつき、動悸、倦怠感、疲れ、だるさなど。婦人科、耳鼻科、脳神経外科、内科などに行き、血液、コンピューター断層撮影装置(CT)などの検査をしても異常なし。食欲もあります。ですがあまりにも長い期間なので困っています。顔面神経痛のためリボトリールを処方され、頭がぼーっとするのが治まるのですが、飲んでいて問題はないでしょうか。
<回答>朋佑会札幌産科婦人科(札幌市北区) 院長 佐野 敬夫さん
更年期障害は閉経によって卵胞ホルモンが減ることで起きる、発汗やほてりに代表される不定愁訴です。通常閉経前後の10年間に生じますが、60代でも症状がある場合もあります。服用されているリボトリールは倦怠感、ふらつきなどの副作用があるので、相談者の症状はそれかと思いました。しかし、一番つらい頭がぼーっとする症状がリボトリールで治まるとのこと。そこで、薬は辞めず、主治医と相談してリボトリールの量を少し減らしてみてはいかがでしょうか。もし減らしたことで顔面神経痛がひどくなるようでしたら、量を戻してもかまいません。それに加えて、漢方薬を試してみてください。四物湯と苓桂朮甘湯です。四物湯はいわゆる貧血の薬で、頭がぼーっとする症状、倦怠感などに効きます。苓桂朮甘湯はめまいの特効薬で、動悸、頻脈などにも効きます。この二つを合方すると連珠飲という処方になり、今まで述べてきた症状すべてに当てはまります。連珠飲は便利な処方ですので「ルピーナ」という名称で市販されています。ただし「ルピーナ」は一日量を低く設定しているので説明書の2倍くらい飲まないと効果は期待できません。連珠飲は飲んで1週間くらいで効果が出るので、試してみてください。〉
最初に書いた私の回答は、この患者さんが目の前にいるのを想定したものなので、自分の迷いなども表現していて、切れ味の悪いものでした。記者さんから以上の原稿の確認のメールがきたとき、文章のメリハリもさすがプロで、「バッチリです」と返事しました。