院長ブログ カーブ

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第109回 忙酔敬語 映画『ガタカ』

当直明けの1月19日の日曜日、新聞のテレビ欄をながめていると、道新、朝日、読売すべてで、〈1.58 映画「ガタカ」(1997年アメリカ)残酷なほど美しい未来SFドラマ最高傑作!〉と掲載されていました。「こりゃ面白そうだ」と浮き浮きと家に帰ってテレビの前に寝っころびました。
はじめのお産のシーンから私の心は奪われました。近未来、赤ちゃんは遺伝子操作によって作られた「適正者」と、欠陥を持つ可能性のある自然妊娠による「不適正者」に分類されるようになっていました。主人公の両親は自然妊娠を選択しました。お産も麻酔を使わない自然分娩で、お母さんは陣痛に耐えて汗みどろで頑張っていました。その結果、生まれた主人公は寿命が30歳ちょっと、心臓病になる可能性ありなどと診断され、「不適正者」となりました。法律では「適正者」と「不適正者」は差別してはイケナイことになっていますが、現実社会はそうはいかず、主人公は宇宙飛行士を夢見ているのですが、その育成機関「ガタカ」に入ることすらできません。
2000年、アメリカのクリントン大統領はヒトゲノムのほとんどが解明されたと発表しました。その当時の私の感想は、「なんで専門家でもない人間がこんなことに口をはさむのだろう。まったくアメリカの大統領はパフォーマンスにこだわるなあ。そう言えば日本に来たときもジョギングをして元気なとこを見せつけていたぞ。そのためにかかった警備の費用はバカにならないはずで、はた迷惑だったよなあ」というものでした。
昨年の3月、臨床遺伝がご専門の横浜市立大学医学部附属病院院長の平原史樹先生が札幌で出生前診断について講演されました。これから書くことは、そのときの私のアヤシゲな記憶で、もし間違っていても平原先生の責任ではありませんよ。
現在(昨年の3月当時)、ヒトの遺伝子はスーパーコンピューターによってくわしく解析されるようになりました。ただし、横浜市立大学では、解析に要する時間は2日間で、費用は300万円もするそうです。それによって将来のその人の能力も予想できるそうです。ホモになる可能性まで分かるそうです。そして、そのデーターをもとにして雇用の判断をしてはならないとオバマ大統領は言っているとのことでした。
このあたり17年前の『ガタカ』と同じですね。あらためてビックリしました。ただし『ガタカ』では、この検査が一瞬のうちに分かるので、施設内を通過するのにも検問にも利用されていました。このため主人公は仲買人を介して「適正者」のサンプルを手に入れて、「不適正者」である自分をいつわりながら日々の生活を送っていました。そして、いろいろな困難を乗り切り、念願の宇宙飛行士となって土星の衛星タイタンをめざして出発したのでした。 映画はここで終わりでしたが、いつかはバレルぞと私は予感しました。
結局、この映画のテーマは、「遺伝子操作や差別はイケナイよ」ということなんでしょうね。また、期待した「残酷なほど美しい」ところはサッパリ分かりませんでした。イケメンのジュード・ロウのことかなあ、ベッピンさんのユマ・サーマンのことかなあ、それとも映像全体のイメージなのかなあ。
私がこれまでSF映画で一番美しいと思ったのは、学生のときに見た、ソ連時代に制作された『惑星ソラリス』でした。よくもまあこんな退廃的な映画をソ連共産党が許可したものだと不思議に思ったことでした。