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第10回 忙酔敬語 鍼治療(良導絡治療)事始め

私は日常の診療で、1日に2,3人から多いときで5,6人の患者さんに鍼治療をしています。中国や韓国、その他欧米の国々では、西洋医は特別に鍼治療の勉強をして資格を取らないと鍼治療は許可されないのですが、さいわいにも日本とイタリアの医師は何をしてもいいことになっています。ちょっと不安に思われるかもしれませんが、鍼治療に用いる鍼は、注射針よりもはるかに細く、体を傷めることはほとんどありません。
鍼治療を始めたきっかけは、子宮がんの手術の後、膀胱麻痺になって尿が出なくなった患者さんでした。子宮がんの手術は子宮だけでなく、子宮の周りの組織も取り除くので、膀胱の神経を傷つけることがあります。膀胱の機能の治療には西洋医学にも限界があり、鍼治療をしてみようということになりました。そこで先輩のM先生が、鍼治療を電気生理学的に応用した良導絡治療を会得していたので、教えを請いました。膀胱の働きに関係する穴をノイロメーターという電流計で確認して、鍼に電気を通しながら治療しました。
ふつうの鍼灸治療では治療穴を触診で診断して治療をするので、何年も専門学校で学ばなければならないのですが、良導絡では簡単に治療点を探り当てることができます。したがって医師が鍼治療を志す場合には最適な方法です。
この患者さんは鍼治療でもけっこう手こずり、自分の力で排尿できるまで1か月もかかりました。しかし、頭痛や肩こりなど様々な症状を訴えるので、そのつど鍼治療をするとたちまち症状はなくりました。患者さんはビックリで、私も「俺って天才かも」と思いました。
その後、小児科と良導絡を専門にしている中根敏得先生の主催する研修会に参加しました。中根先生はまさに良導絡のマスターで、一般の方向けに「基本良導絡治療」現代書林(\1,300)という本を書かれています。
良導絡は自律神経の診断学としても奥が深いのですが、私は患者さん一人に多くの時間をさけないので、鍼灸治療院で行われるような丁寧な鍼治療はしていません。それでも原因不明の腹痛や、妊婦さんの坐骨神経痛などに瞬時にして効くので(本当ですよ)、鍼治療の必要性を日々実感しています。最近は穴を見つけるのにも慣れて、手早くできるようになりましたが、微妙に決めかねるときは、ノイロメーターを用いて治療点を確認しています。
ときどき新しい治療点を発見しては(誰かもう発見しているのかもしれませんが)、学会で発表をしています。今年は血海という太ももの内側にある穴が、肩こりや寝違いに効くことが分かり、あちこちで発表するつもりです。