佐野理事長ブログ カーブ

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第637回 忙酔敬語 オーツ麦

 「どうやったら痩せることができるんでしょうか?」

 「白いご飯と小麦のパンをやめることです!」

 そくざに言いました。キッパリと。

 白米と小麦はすぐれた食品です。味にクセがないのでいくらでも食べることができ、その上高カロリーです。生産性も高く世界中に広まりました。歴史家の磯田道史さんは「弥生時代、米を収穫できる男は非常にもてたんですよ」と言っています。かたや古代ローマ人は小麦のパンが大好きで、帝国は「パンとサーカス」で市民の心を引きつけました。

 子供のときに観た映画で、ハイジが「お祖母ちゃんのために」と白パンをクローゼットに隠し蓄えるシーンがありましたが、白パンのどこが良いのかよく分かりませんでした。ある日、父が「黒パンを見つけた!」と嬉しそうに買ってきて、マーマレードをたっぷりつけて美味そうに食べました。私も食べてみましたが酸味があってボソボソして食えた代物ではありません。そしてハイジが白パンに憧れた気持ちがよく分かりました。父はシベリアに抑留されたとき、黒パンを支給されましたが、他の日本人と違って抵抗なく口にすることができたので、シベリアの厳しい生活に耐えぬいたようでした。

 白米と小麦の代用となる食品が大豆とオーツ麦です。私は毎朝かかさずに煎り大豆120gを無糖の缶コーヒーを飲みながら食べています。これは歯が丈夫でないとダメなので、すべての人にはおすすめできません。そこでオーツ麦の登場です。

 重量あたりの栄養価を比較してもピンときませんが、カップでオーツ麦をすくうとその違いがハッキリします。オーツ麦の重さは白米の半分くらいです。しかも繊維がタップリ。ですからご飯代わりに食べてもそれほど体重は増えません。ただし美味くはありません。そこで工夫が必要となります。

 オーツ麦の伝統的な食べ方としてイギリス式のオートミールがあります。オーツ麦をお粥にして熱い牛乳と砂糖をかけて食べます。通の食べ物と言われていましたが、これも父がホテルで美味そうに啜っているのをマネしても、どこが通なのかサッパリ分かりませんでした。多分、渋沢栄一の好物だったためこんなことを言われたのでしょう。

 一般に売られているオーツ麦は加工処理されているので、玄米みたいに時間をかけて炊く必要はありません。レンジでもOKだそうですが、私は適量の水とともに5分ほど煮てから食べています。

 煮上がったオーツ麦は意外にも和食に合います。具体的には煮魚や古漬けなど。妻が東京から老舗の鰻の蒲焼きを買ってきたことがありましたが、色といい食感といい白米よりもオーツ麦の方が合っていると思いました。白米は存在感を主張しますが、オーツ麦は日陰者に徹している感じで鰻を引き立てていました。自分一人のときはドンブリに炊きあがったオーツ麦を入れて、サバ缶を汁ごとかけてサクサクと食べます。熱いうちに卵ご飯にしてもOKです。

 意外に合わないのがカレーなどの洋食のソースものです。オーツ麦は直に食べると白米に劣ります。そこでカレーソースの中にオーツ麦を投入すると美味しくなります。家内がスパゲティーのソースを作ったとき、ソースにオーツ麦をパラパラ入れて水分を足して煮たところ優れものの一品となりました。いろいろ工夫すると食生活は楽しくなりきます。