佐野理事長ブログ カーブ

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第626回 忙酔敬語 隕石なんか何のその

 地球温暖化の影響でシベリアとカナダの永久凍土が溶け出しているそうです。それにともなって4万年前に閉じ込められていたバクテリアやウィルスが感染力を復活させて人に被害をおよぼす恐れがあるとNHKで報道されました。 

 ここで思い出したのが昭和のゴジラ映画3作目の『キングコング対ゴジラ』。ゴジラ映画2作目の『ゴジラの逆襲』で雪山に閉じ込められたゴジラが、北極の氷山が溶け出したのをきっかけに 再び現れて、キングコング相手に大暴れしました。

 かように生物はシブトイのです。6600万年前、巨大隕石の衝突により恐竜をはじめアンモナイトなど地球上の生物の70%が絶滅しました。そのとき発生した煙が地球の回りを取りまき、太陽からのエネルギーをさえぎったため植物までダメージを受け、多くの草食動物が姿を消しました。平均気温は6℃さがり「衝突の冬」と呼ばれる時代となりました。それでも平均気温は現在と同じ15℃で、いかに恐竜の住んでいた中生代の気温が温暖だったか想像がつくでしょう。ほとんど熱帯ですね。地球上から氷雪が消えた時代もあったようです。今の人間が恐れている温暖化なんかどうってことはありません。

 「衝突の冬」はそう長くは続きませんでした。地球の気温の基本は、太陽からの距離と地軸の傾きに左右されるため、地球を取りまく煙や雲がなくなればもとどおりになります。太陽の光を得れば植物はアレヨアレヨという間に生えてきます。動物も生きのこりや新種がアレヨアレヨと現れましたが、大型の恐竜はすでに死に絶えているので恐竜の一部である鳥類の時代となりました。それでも生態系のニッチ(すき間)は空いていて、そこに哺乳類が爆発的に多様化して、さらには大型化しました。この辺の事情については昨年に発行された土屋健著『生命の大進化40億年史 新生代編』によりかかっています。

 哺乳類の多様化を具体的に説明すると、単孔類、有袋類、有胎盤類がそれぞれ進化しました。単孔類は、文字どおり孔が一つです。鳥と同じように卵を産みます。ハリモグラ、カモノハシがよく知られています。有袋類はカンガルーの仲間で未熟な赤ちゃんを袋に入れて効率よく育てます。有胎盤類はネズミ、イヌ、ネコ、クジラ、霊長類などです。単孔類→有袋類→有胎盤類と進化したのではなく、それぞれが独立して進化しました。もう、大型恐竜が入り込む余地はありません。ジュラシックパークなんて夢のまた夢です。 

 たった一発の巨大隕石の衝突で生物の交代劇がなされたのでした。また巨大隕石が来たらどうなるか?もちろん再度の大絶滅ですが、そうそうぶち当たるものではないとのことです。太陽系の外側にある最大の惑星である木星が、その強力な引力でほとんでの隕石群を引き受けているからです。もし木星がなかったら1万年に1回のペースで巨大隕石が地球に落ちてきて、とても進化するヒマなんてなくなります。まさに木星様々です。

 さて、その後の霊長類の進化によって人類が誕生しました。やく100万年前のことです。私が小中学生のころは、50万年前にジャワ原人とが北京原人が現れて石器を使うようになり、30万年前にヨーロッパ方面にネアンデルタール人が現れたと教えられました。最近ではホモ・サピエンスも30万年前にアフリカに誕生して、中近東付近でネアンデルタール人と交雑して、ネアンデルタール人の遺伝子が数%ばかり我らが遺伝子に紛れ込んでいることが判明しました。こうなると別の種というより同種と考えた方が自然です。

 とにかく巨大隕石のおかげで現生人類はいっときの夢を見ているのであります。