佐野理事長ブログ カーブ

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第597回 忙酔敬語 ああ結婚

 朝日新聞の「オピニオン」に次のような投稿文が掲載されていました。

 

 先立たれて知る事実婚の現実

 無職 S.J (神奈川県 83歳)

  これまで私が生きていた時間に異変が起きました。

 連れ合い、相棒、パートナーであった夫が最近急死して、別姓で事実婚の生活を過ごしてきた時間が、現在の私の社会的存在すら変えてしまう。そういう現実を知ることになったのです。

 すべての夫名義の自宅・車両・公的料金の引き落とし口座の解約、夫の戸籍謄本・住民票の取得すら、私には資格がないことがわかったのです。事実婚証明書や同居証明書が存在していないというだけで、私と夫が夫婦だったことを法的に証明できないという現実に遭遇しました。刑事事件の捜査では、配達される郵便物の証明として認められるということですのに。

 このような単純な現実すら法的に通らない日本は、法治国家といえるのかとまで思ってしまいます。配偶者であった夫の死去によって、私のこれまでの社会的存在すら否定されるような現実に驚かされます。

 夫婦同姓を定めている民法750条の条文を、「選択的夫婦別姓を認める」といった一言の法改正で、このような状況が避けられたのではないかと痛感しています。

 

 ここで私事になりますが、昨年、母が93歳で他界しました。その遺産相続の件で妹夫婦と話し合って、通常とは異なる配分をしました。司法書士の方にも入ってもらい円満に解決しましたが、手続きが終了するまで8ヵ月もかかりました。父が亡くなったときは住居・土地・財産はすべて母へということで、面倒なことは何一つなかったのに、今回は妹の連れ合いがいろいろ骨折りをして何とかこぎ着けました。

 かように結婚を国が認めているということは残された配偶者にとって非常に重要なことなんだな、と私も実感しました。

 近年、性的少数者(LGBTQ)同士の結婚を認める、認めないの議論がなされていますが、どうゆうことか今一つピンと来ませんでした。しかし、この記事を読んでよく分かりました。大事な人が残された場合、結婚という事実があれば、私の母のように財産は結婚相手にスンナリと入ります。何もなければ有象無象の親族の取り分となります。役所は法律と証明書で動いているので、どうして事実婚の自分が?と抗議しても何も援助することはできません。

 事実婚の証明よりも結婚の方が手間がかかりません。離婚も簡単です。昔、私が対応していた患者さんの夫婦仲がどうしようなく悪くなり離婚することになりました。離婚証明書には2人の保証人が必要です。ご夫婦はそのときだけは仲よく話し合い、保証人の1人に私を選びました。一緒にいた心理士は「先生、そんなことをして本当にいいんですか?」と呆れましたが私は引き受けました。いろいろ事情がおありでしょうが、大切な人のために是非とも正式な結婚をおすすめします。