佐野理事長ブログ カーブ

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第556回 忙酔敬語 こまめに水分を補給してください。

 暑い時期が過ぎました。この間、耳にタコができるほど聞いた言葉。

 「熱中症に気をつけて、高齢者はとくにこまめに水分を補給してください」

 子供向けの番組(元子供の私もファンです)、香川照之の「昆虫スゴイZ」で香川さんは「虫取りをするときは肌を出さないで長袖を着てくださいね、それと水分補給を忘れないで熱中症に気をつけてください」と締めくくっていました。香川さんは長袖どころかカマキリのかぶり物をしているので、その暑苦しさは想像したくもありませんが、本人が好きでやっているのでしたかありません。長袖ウンヌンは怪我と日焼けの防止ですが、水分補給に関しての注意は子供には不要だと思います。子供は咽が渇いたら我慢できません。子供の時分、カラカラに渇いて水道の蛇口に口を当ててゴクゴクやったものですが、あれは美味かった。まさに「甘露、甘露」でした。

 イヌもウマも咽が渇いたら、それこそ勢いよく飲みます。咽が渇くのに気づかないようだったら生物はおわりです。人間も同様、よけいなお世話だと思っていたら最近、自分も渇きに気づかなくなったことが判明しました。お墓参りの帰り、ステーキハウス『ビーフインパクト』で270gのハンバーグと中ライスを注文しました。家内はガーリックライスをとりましたが多すぎると半分ほど私にくれました。ハンバーグにはしっかり味がついていてご飯がないとダメで、ご飯をとって正解でした。ただしお腹はパンパン、途中で水を飲みたくなりましたが、テーブルにあるのは氷入りの水でした。私は冷たい物は飲まないことにしているので家に帰ってから飲むことにしました。ところが家に着くとあれほど渇いていたのに水が飲みたいという衝動が消えていました。

 「高齢者は脱水を自覚しないのでとくに注意して、定期的にこまめに水分を補給してください」というのは、こうゆうことだったんですね。あんなにたくさん食べたのに翌朝の体重はいつもより減少していました。でも自覚症状はなし。それほど汗をかいたとは思っていませんでしたが、知らないうちに脱水状態になっていたようです。

 昔の人たちはどうだったんだろうと思いを巡らしているうちに、勝海舟の最期についてNHKだったか民放だったかは忘れましたがコワイ逸話を思い出しました。

 勝は小柄でしたがイケメンで頭の回転も速く多くの女性にもてました。博愛主義者の勝は、それらの女性たちの愛にこまめに応えました。後年、勝は彼の話を聞きに来た連中に自慢話をしました。「オレの女房の民(たみ)はなかなかのやり手だった。オレが何人もの女中に手をつけても家では波風一つ立たなかった。もし民が男だったら内務大臣もこなせたはずだぜ」 晩年、ヨレヨレになった勝は、「おい、民、水を飲ませてくれないか」と古女房に頼みました。民が海舟に手渡したのは何とストレートのブランデー。それを一口含んだ勝は「ウェッ」と言ったきり人事不省となり、まもなく昇天。民は子供たちに厳命しました。「わたしが死んでもけっして勝と同じ墓に入れてくれるな」

 モテモテの海舟も最後の詰めは甘かったようです。

 その点、古代ローマのカエサルは、女房連れでもパーティーの席で元カノと出会えば必ず「お元気でしたか?」と声をかけました。塩野七生さんは「女は無下にされるのが一番傷つくものだ」とカエサルを高く評価していました。これに習って私は講演会で顔見知りの女医さんに会うたびに挨拶をしていますが、もてているのかどうかは不明です。