院長ブログ カーブ

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第554回 忙酔敬語 ここにも自然が・・・

 5月の末に札幌で東洋医学会学術総会が開催されました。コロナのためオンラインの学会でしたが、ぜひ現地で発表したい!と熱望される先生が続出で、予想以上に盛り上がりました。そしてさらなる盛り上がりのきっかけになったのは、泉州統合クリニックの中田英之先生が企画した『修験道の祈りと修行』でのホラ貝の実演でした。コンベンションセンターのホールに鳴り響いたホラ貝は、教育講演にいらした寺澤捷年先生にもエネルギーを与えて、「元気が湧いて実に良かった!」と力強く講演されました。当の中田先生は生まれたときに洗礼を受けた根っからのクリスチャンです。クリスチャンが仏教の修行を紹介するという不思議な取り合わせに我々準備委員一同は首をひねっていました。

 翌日、中田先生自身が『養生』について講演されました。座長は私が買って出ました。中田先生とはウマが合い、学会で顔を合わせるたびに、「漢方がなぜ効いたかというより、どうして漢方を飲まなければならなくなったのか?ということを問題にすべきではないか」と私が言ったり、「最近、僕、生活指導だけで漢方を使うことは少なくなりました」と、何かと意見が一致していました。

 講演の趣旨は、しっかり養生することで漢方など医師の世話になることはなくなる、心身とも健康になるためには修験道の修行が参考になり自分自身も参加している、キリスト教とは宗旨違いと思われるかもしないがイエス・キリストが旅したルートと修験道の歩くルートはスライドのように一致していて、行き着くところは同じなのでかまわない、などと90分の講演はまたたく間に終了しました。 

 近年、マインドフルネスというリラックス法が注目されています。自分が今、感じていることを、楽しいとか不愉快だとか評価しないでそのまま受け入れるという方法です。「言うは易く行うは難し」とはまさにこうゆうことです。マインドフルネスの到着点は禅僧の「悟り」の境地に似ていて、脳波の研究でも実証されています。マインドフルネスを会得するのはふつうの生活環境ではなかなか難しく、修行僧のように人里離れた山での修行が近道です。中田先生が紹介した「修験道の修行」もそうです。こういった荒行は確かに効き目はありますが、体力のない人には酷というものです。

 私は、毎日歩いて通勤していますが、20年前は40分でたどり着いた道のりが最近では1時間近くかかるようになりました。20年前は前傾姿勢でとにかく早く歩くことを心がけていました。そんな歩き方では姿勢は猫背になるし膝や足のつけ根が痛くなります。すなおに体力の衰えを受け入れて、顎や肩を引いて姿勢の改善を重点に置きました。そのかいあって久しぶりに会った次女が言いました。

 「お父さん、姿勢が良くなったね、若返ったみたい!」

 私が歩く時間帯は5時過ぎから6時くらいで、人が歩く散歩道は避けているため人と会うことはほとんどありません。耳のそばを流れる風や鳥の鳴き声、草木などの移ろいを感じ取りながら、けっこう充実した贅沢な時間を味わっています。そんな荒行をしなくても自分が生かされている、ということは肌で分かります。アスファルトの割れ目から生えている草、人は「たくましくて健気だ」と言いますが、そんな感情移入などしません。夏は夏、秋は秋と自然の移り変わりを楽しんでいます。自然と一体となった境地で、そんなに頑張って修行する必要なんかないのになあ、と思っています。