佐野理事長ブログ カーブ

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第503回 忙酔敬語 快便について

 動物の基本構造は、口から食物を取り入れて肛門から残渣物を排出するという筒状の形態からなり立っています。もともとの入り口(原口)がそのまま口として機能している動物を前口動物といって、イカやタコなどの軟体動物や昆虫などの節足動物が一般的に知られています。逆に入り口が肛門となったのが後口動物で、ウニなどでの棘皮動物や我らが人間を含む脊索動物が代表格です。人間が含まれるからといって後口動物が前口動物よりエライということはありません。寿司ネタではイカやタコよりもウニの方が高いではないか、と言う人もいるかもしれませんが、バカバカしいので相手にしないことにします。

 いずれにせよ動物は筒状の形態なので、健康の原則は入るべき物が順調に入り、出るべき物がラクに出てくれることです。ラクに出てくれないと入る物も入りづらくなります。たかが便秘とあなどってはイケナイのです。 

 女性には便秘の人が多いと言われています。排卵後は妊娠の準備のため黄体ホルモンが増加しますが、黄体ホルモンは腸の運動を抑制する働きがあるため、黄体ホルモンが増加する時期は便秘で悩む時期と重なります。便が出ないと溜まった便は固くなり、それをムリクリ出すと切れ痔になります。まったくもう踏んだり蹴ったりです。

 この10年ばかり私は小説を読むことは少なくなりましたが、学生時代は女流作家にハマってました。その中で円地文子『女坂』にいたく感銘を受けました。どう感銘を受けたかはほとんど忘れてしまいましたが、絶世の美女であるヒロインが切れ痔のため重度の貧血になってしまった場面は、美女と切れ痔という妙な組み合わせのせいか、いまだに記憶に残っています。名作『女坂』は、今の私にとっては切れ痔・貧血小説です。

 便秘の解決法ですが、まず入れる物から考えてみましょう。昔は繊維質の多い物は消化に悪いと敬遠されていましたが、その消化の悪い部分が便の構成要因として重要だと判明しました。アフリカで雑穀を常食としている人たちは1日に500gの便を排泄し、その結果、大腸がんが少ないとの報告があります。私は毎朝120gの煎り大豆を食べていますが、おかげさまで300gくらいの大きなバナナ程度のウンチが出てスッキリしています。

 昔、豆腐を手作りしたことがありましたが、その際に出るオカラの量にビックリしました。ほぼ本体の豆腐なみに出来るのです。オカラには大豆の食物繊維のほとんどが含まれています。食品として売られるのはごく一部で、その他は豚などの飼料に回されるものと思い込んでいたら、1999年、無許可でオカラを購入して飼料として利用していた業者が、産業廃棄物を飼料としたと最高裁判所から50万円の罰金を科せられました。何でも国民の15%以上が毎日オカラを食べれば産業廃棄物とならないとのこと。実にもったいないことです。私のように大豆をそのまま食べるのは栄養学的にも経済的にも合理的なのです。

 入れる物についてはまだまだ述べたいことがありますが、紙面の都合上、今度は出る部分について。私は日本の洗浄機附き便座は世界に誇れる物と考えています。肛門を清潔にすることでパンツの汚れのみならず痔の予防にもつながるからです。昭和の昔、「暮らしの手帖」で痔に関してのQ&A特集がありました。当時、肛門の洗浄機はまだ登場していませんでしたが、洋式のトイレは行きわたり、便器の底には水が溜まっていました。その水は意外に清潔なので、それで肛門を洗っていますと痔の教授がインタビューに答えていたのには驚きました。洗った後のその手はどこでどう洗うんだろうと思ったことでした。