佐野理事長ブログ カーブ

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第461回 忙酔敬語 鼻うがい

 歯の定期検診を受けているクリニックで「鼻うがいをやってみませんか?」と勧められました。

 即座に「やります!」と答えました。インドの伝統的な健康法として鼻うがいをしている映像を思い出したからです。インド人は鼻が大きいので鼻の中も清める必要があるんだな、と解釈していました。風邪などの感染予防対策として手洗い・うがいなどが奨励されていますが、咽頭以外にもウィルスの入り口はいろいろあります。コロナは目の粘膜からも侵襲するため洗顔も奨励されています。うがいはコロナ対策としては疑問視されていますがインフルエンザには有効です。

 人間の横顔の解剖図を見れば分かりますが、鼻の奥の空洞は咽頭よりもはるかに広く描かれています。したがってこのあたりを洗浄するということは意義があると思います。

 私は鼻の性が悪く、子どもの頃、蓄膿で耳鼻科通いをしたことがありました。「アー」と言いながら鼻の洗浄をされるのが苦痛でした。大人になってからは耳鼻科通いをすることはなくなりましたが、鼻の調子が悪いときはドクダミを煎じて飲みました。ドクダミはけっこう効きます。庭の片隅に生えているドクダミを乾燥させて飲んだこともありました。

今ではパック入りとなって、お向かいのはるにれ薬局にも置いています。

 ニールメッドのサイナス・リンスは240mlの軟らかいボトルです。これに洗浄液を入れて鼻の穴に当ててエーッと言いながら片方ずつ注入します。洗浄液は洗浄液の素を36℃の水に溶いて作ります。洗浄液の素はほとんどが食塩でホウ酸がチョッピリ入っているとのこと。洗浄液の素は1回分ずつ小分けにされて購入できますが、お吸い物程度の食塩水で充分です。真水や高濃度の食塩水では浸透圧の関係で粘膜がダメージを受けるので、生理食塩水が最適な濃度です。

 それほど面倒ではありません。ボトルに240mlの水道水を入れて小鍋に移し食塩を一つまみ入れます。指でかき混ぜながら人肌になるまで火にかけるか、水にポットのお湯を少量加えてもかまいません。36℃程度と書いていますが、そんなことは指の感覚で分かります。温まった洗浄液をボトルに戻して前屈みになって鼻腔に当ててエーッと口から息を吐きながら注入。意外にあっさり、もう片方の鼻腔から洗浄液が出てきました。

 当初は食塩水が鼻に残って、まるで海で溺れたような感覚でしたが、ティッシュで鼻を軽くかむとスッキリします。1日2回がおすすめということですが、あわただしい時は1日1回のこともあります。これだけで鼻の調子がずいぶん良くなりました。

 動物は皮膚によって感染を防御していますが、口や目、鼻などの穴がウィークポイントです。口と鼻は、いま紹介した「うがい」で何とかなります。コンタクトを装着している人には洗眼液セットがあります。耳は鼓膜があるので、それに任せて、あまり刺激しないようにと耳鼻科の先生は言っています。肛門は日本が世界に誇るお尻洗浄トイレで痔疾が激減しました。オシッコを我慢すると膀胱炎になりやすくなります。旅客機の客室乗務員が膀胱炎を労災として認めよ!と訴えたことがありました。

 女性はさらに肛門と尿道口の間にもウィークポイントがあります。そこは次世代を担う大切な部分です。例外はありますが哺乳類のメスの共通孔です。そこを守るのがわれわれ産婦人科医の重要な責務であります。