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第83回 忙酔敬語 腰痛の原因は脳にあり、そして鍼治療の役割 

最近、腰痛の原因の85%は、腰そのものにあるのではなく、心理的なストレスにあると言われるようになりました。ということは腰痛のほとんどは心身症ということになります。第12回のブログにも書きましたが、心身症は心の病気ではなく、心理的ストレスによる体の病気です。さて、こうなると整形外科の先生も困りますね。患者さんによっては精神科の先生と連携してチーム医療をしなければならなくなります。
新聞に掲載された「腰痛治療ガイドライン」の抜粋を読むと、鎮痛薬、心理療法、向精神薬が有用で、従来行われていた、安静、牽引、マッサージの効果にはエビデンスが無いとのことでした。私、不勉強で「ガイドライン」そのものは読んでいませんが、鍼治療については一言も触れていないのが気になりました。
2年前に「円形脱毛症」の治療に関する日本皮膚科学会のコメントを新聞で読んだことがありました。私のアヤシイ記憶によると、そこには最も推奨する治療法を「A」,推奨する治療法を「B」,効果が不明なのを「C」,やってはいけない治療法を「D]とランク付けしていました。(今、ネットで調べたら「A]に関しての記載はありませんでした。けっこう難しい病気なんですね)。その「やってはいけない治療法」の中に鍼灸治療が出ていたのには驚きました。私はときどき円形脱毛症の患者さんに鍼治療をしていたからです。毛の抜けた部分に沿って5,6本の鍼を打つと良くなっていくような印象がありました。だから「D]はないだろうとちょっと憤慨しました。私の治療を受けた当院のスタッフも「本当に効きましたよ」と言ってくれました。帯広の吉川先生にその記事のことを話したら「まあ、ヒドイ!」と私以上に憤慨されていました。
さて、今回の腰痛治療についての新聞紙上での鍼灸無視は、整形外科学会の鍼灸治療に対する悪意を感じましたが、私の邪推でしょうか? マッサージに関するコメントは記載されているのにですよ。一応、鍼灸に言及した皮膚科学会の方がまだマシです。
先月、女性心身医学会に参加して、原因不明の腹痛に関する講演を拝聴しました。講師の先生は痛みに関する脳の働きを解説していました。それは原因不明の腰痛のメカニズムと全く同じでした。そして治療は難しく、心が折れないように頑張っていると述べられていました。
昨年、東洋医学会北海道支部の勉強会で、鍼治療のメカニズムについて私の師匠である(私がかってに弟子と称しているのです)富良野幾寅の下田先生は、「あれだけ一瞬に効くんだから、神経系と脳に働くんだろうね」と言われました。確かに第20回のブログにも書いたとおり、下腹部痛の患者さんの一部には、鍼治療で一瞬にしてよくなることがあります。ただし、効く患者さんの痛みはほとんどある一点といいほど限られた部分にあります。そして、お話を伺うといろいろと精神的、身体的ストレスがあったのが分かります。治療は小さな円皮鍼を痛みと180度反対側の部分に貼ります。これで患者さんが「あれっ、これホント? 痛くない!」とビックリするほど効きます。
最近ではこの治療法を応用して、腰の一部を痛がる患者さんの胸に円皮鍼を貼って驚かせています。痛みの原因は確かに脳にあると実感してます。だからといって必ずしも難しくて時間のかかる精神的なアプローチをすることはありません。いきなり脳に働きかける鍼治療から始めるのも良いのではないかと思っています。