院長ブログ カーブ

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第335回 忙酔敬語 生後8週まで犬猫は親元に

産後の退院診察のとき、新米のお母さんに言い添えました。
「とにかく赤ちゃんを放っておかないでください。泣いたらすぐに抱っこする、これが鉄則です。長い間お母さんから離れると赤ちゃんは不安になって情緒不安定な子供になることがあります。犬や猫だって早いうちから母親から離されると、大きくなっても加減ということが分からないで人を噛んだりするそうですよ。札幌では生後8週までは犬や猫は売ってはイケナイという条例が出来るということです」
横で聞いていた助産師Sさんがため息をつきました。
「うちのシータンもそうだった・・・」
シータンは本名、柴太郎。柴犬で生後1か月になるかならないかでS家に飼われました。それは可愛かったそうですが、家族に人間の赤ちゃんが加わったり引っ越しをしたりして環境がかわるにつれて、だんだんやさぐれて突然、意味もなく吠えたりSさんの手に歯形がつくほど噛んだりして手がつけられなくなりました。獣医の先生に相談したところ、ジアゼパンやアナフラニールといった抗不安薬や抗うつ薬を処方されました。それを聞いた私は心底感心しました。獣医さんって精神科的な診療もするんですね。お産もあつかうし、外科治療もするし、まるでスーパードクターです。総合診療科の比ではありません。
生後、目が開いて毛が生えてくるようになると、犬でも猫でも小さいほど愛くるしくて誰でも欲しくなります。甘噛みをしますが力が弱いのでまだガマンできます。生後3か月もすると加減するようになり甘噛みも軟らかくなり痛くなくなりますが、生後8週以前に親から離されたペットはその加減が出来ないままに成長します。他者との関係性を学習するにはある期間以上の母親との接触が必要です。それを過ぎると自然に親離れをします。
ときどき、外来の患者さんの腕に引っ掻き傷を認めることがあります。それも一人や二人ではありません。リストカットでもなさそう。
「どうしたんですか?」
「猫に引っかかれました」
「猫!? 虎ではなく猫ですか? じゃあ子猫か・・・、それにしても凶暴ですね」
「それがもうすぐ10歳になるんです」
どうもその猫も早いうちに親猫から離された可能性があります。
私のウチも、犬や猫を飼ったことがありますが、成長するにつれ精神状態も大人になっていきました。最後に飼った猫は当時、中学の教員をした妹が、これもちょっとやさぐれた生徒から譲り受けましたが、まだ2か月にはなっていなかったと思います。それまで飼っていた猫よりも激しい気性で、チビのくせにたまにしか家に帰ってこない私に爪を立てて飛びかかってきました。それでも年をとるにつれておとなしくなり、とうとう20歳まで生きながらえました。一家全員で可愛がったので精神状態を修正できたのでしょう。
ネットで確認しても、ペットは8週齢まで親元に!「8週齢規制」が全国に先がけて札幌市で条例化することになりました。札幌市もたまには良いことをするものです。
これからは人間にも目を向けて、赤ちゃんや子育てに関しても積極的に支援してもらいたいものです。可愛らしくて育てやすい子供が増えれば、さらに子供が増えて少子化問題は解決するのではないか、と甘い期待をするしだいです。