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忙酔敬語/院長ブログ

2018.11.19
第356回 忙酔敬語 母児分離

当院では切迫早産の治療の目標を妊娠36週にしています。要するに妊娠10ヵ月。ここまで来ると保育器に入ることは少なくなり、いつもお母さんと一緒にいられるようになるからです。大学病院など新生児の管理が充実している施設では妊娠34週までで、それなりの管理で赤ちゃんは安全に育ち、それ以上は母体の負担になるだけだから意味がないそうで、アメリカの教科書にもそう書いてあります。でも本当にそうでしょうか? それなりの管理とは保育器の収容を意味しています。ただ保育器に入れればいいってものではなく、四六時中、赤ちゃんの様子を観察しなければなりません。当院には新生児専門の笹島先生がいますが、夜間の病棟は助産師あるいは看護師の2人体制なので、分娩があったりすると充分な観察ができません。そこで妊娠36週までハードルを上げています。

カンガルーケアという言葉をご存じですか? これは医療事情が不充分な南米のコロンビアで考案された苦肉の策でした。早産で生まれた子を収納する保育器がなく、しかたなく赤ちゃんを裸のままお母さんに四六時中抱かせたところ、体温が下がることはなく他の子どもから感染することも少なくなり、その後、低体重で生まれた赤ちゃんは順調に育つことが分かりました。これを満期産で生まれた子にも応用したところ、やはり感染も少なく、お母さんのオッパイの出も順調となり、これは良い! と世界中に広まるようになりました。ですからカンガルーケアというのは基本的に生まれた瞬間からお母さんの体から離さないということです。生まれたばかりの赤ちゃんを「カンガルーケアをしましょうね」と10分かそこらの間だけお母さんに抱かせるというのは本来のカンガルーケアではありません。たんなるカンガルーケアごっこです。

本当のカンガルーケアは大変です。なんせ四六時中お母さんが赤ちゃんを抱っこしているわけで、そのとおりマジメにやっていたら赤ちゃんはいいかもしれないけど、お母さんは死んじゃうね、とある新米お母さんは苦笑いしていました。でも、本来、これが自然の姿なのです。自然、自然、て言うけれど自然は過酷です。

犬や猫も生まれた赤ちゃんを四六時中なめ回したりお乳をやったりして泣いている子を放っていることはありません。これは子犬や子猫の精神状態にも大事なことで、早いうちに母親から分離された子犬や子猫は成長しても甘噛みができなく攻撃的になることが知られています。そこで札幌市は10月1日をもって生後8週間に満たない子犬や子猫を売買してはいけないという条例を出しました。

オキシトシンの研究で有名な米国ウィスコンシン医科大学教授の高橋 徳先生によると生まれたばかりのネズミを24時間中3時間母児分離しただけで、そのネズミは攻撃的な成体になるそうです。では4時間ではどうかというと小さいネズミは常に乳を飲んでいないと死んでしまうので実験は3時間がギリギリの線だということでした。

人間では生まれて間もない赤ちゃんが不幸にも育てる親がいないと乳児院に保護されます。乳児院では保育士さんが入れ替わりで赤ちゃんの世話をしますが、赤ちゃんが心身ともに健康に育つには入れ替わりのお世話ではダメで一定の大人、すなわち里親が数年にわたって育てる必要があることが分かってきました。

しかし自分が生んだ子でもスマホやテレビなどを見ながらボーッと授乳をしては赤ちゃんに愛情は伝わらず、つねにあやす必要があります。動物も人間も一緒です。

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