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忙酔敬語/院長ブログ

2018.5.21
第330回 忙酔敬語 不眠からの解放

第323回(2018.4.2)のブログ「眠れないあなたへ」を読んだ、不眠で悩む患者さんから「カウンセリングを受けたいんですけど」と申し入れがありました。

「眠れないあなたへ」で書きたかったことは、生きているのがツライので寝逃げしてしまいたい、といったかなり追い込まれた患者さんへのメッセージだったのですが、重たい雰囲気を払拭させるために私の寝ションベンのトラウマに多くの行数をさき、言葉足らずで終わってしまいました。カウンセリングは「生きているのがツライ」人への解決方法の一つとして紹介したのです。この患者さんはそこまで大変ではありませんが、なりゆき上、とりあえず心理士による面接の予約を入れました。

不眠に関しては「日本睡眠学会」などいろいろな学会があります。しかし不勉強な私にとってNHK総合の「ガッテン!」が手軽な情報源となっています。昨年も不眠に関するテーマが放映されました。

その中で気になったのが、専門家の先生の「いくら眠れないといってもいつかは眠れる」と言う言葉でした。これは医療関係者ならよく口にするセリフです。言いようによっては患者さんを突き放す感じで冷たくとらえられがちです。この先生の言い方はさいわいにも暖かみがありました。そして、あらためてこれは使えるぞ、と思いました。

お年寄りに多いケースですが、不眠に関するこだわりがあります。昔、不眠が続くと死ぬ、と思われていた時代がありました。子供のとき母親に拷問の中でも一番ツライのが、顔面を固定して左右の目の間に水を一滴ずつ滴下して、眠らせないという方法だと聞かされたことがありました。私の母は現在、認知症ですが、若かりし頃は変なことをいろいろと教えてくれたものです。実際に、アメリカのアクションドラマで悪党に捕まった主人公が滴々とやられてもだえ苦しむシーンを見たことがありました。一見、残酷には見えないので、放映されても問題はありませんでしたが、母親にうんちくを伝授されていたので、ここまで来たか、と主人公を気の毒に思ったことでした。

現在でも睡眠は7時間が理想で、それより短くても長くても長生きはできないという説がまかり通っていますが、個々の人間が実際に7時間寝たかどうかを確かめるのは難しいと思います。実験で睡眠の状態を記録する装置はあり、その結果についていろいろ検証されていますが、寿命がどうだこうだというまで長期にわたって記録した報告はありません。大体、私ならそんな装置をつけられただけで気になって眠れなくなりそうです。

さて、「いつかは眠れる」というセリフについて。まあ、さっき紹介した拷問でも受けないかぎり信憑性はあります。睡眠導入薬を増やすのはワケのないことですが、不眠に関する不安を取り除くようにアドバイスをすることも大事です。

「とくに予定がなければ、不眠を怖がることはないですよ。昔、北極圏のイヌイットの人々は、白夜で夜も昼もないので、眠りたい人がそれぞれ自由に寝たり食べたりしていたそうです。もっと自由に生きてみてはいかがですか?」

翌日、仕事があり寝不足でボーッとしていられないという患者さんにはついては薬物の調整をします。昨年、105歳で亡くなられた日野原重明先生も、海外旅行で飛行機に乗るときは時差ぼけ予防のために睡眠導入薬を利用していました。適切に使用すれば睡眠導入薬で命を削ることはありません。

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