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忙酔敬語/院長ブログ

2018.3.26
第322回 忙酔敬語 この子を残して‥‥

前回の続き。

私の意見を聞いた30代後半のお母さんは言いました。

「でもね、先生。わたしと主人の年を考えると、いくらかわいくも異常のある子を残して先に死ぬわけにはいかないんですよ」

さすがに私も言葉がつまりました。そうだよなあ、きれいごとでは済まないこともあるよなあ‥‥‥。

最近、朝日新聞の「悩みのるつぼ」で障害児を一人で育てている40代の女性の相談に対応した社会学者の上野千鶴子先生のアドバイスを抜粋します。

<‥‥‥。あなたでなければケアができない子どもさん。もしあなたが病気になったり、万が一先立ったりなさったら、いったいどうなるのでしょう?

重度障害児の親は死ぬまで子どもの世話から逃げられない。それどころか死んだ後の心配までしなければならない立場に立たされています。どんなに「複雑なケア」でも、障害者介助のプロや経験のあるヘルパーさんなら、委ねることもできるでしょう。「わたしでなければ」と背負いこむことを、「当事者研究」のパイオニアのひとり、脳性麻痺者の熊谷晋一郎さんは「依存の供給の独占」と呼びました。「わたしでなくてもお世話できる」機会を子どもさんから奪うことで、子どもさんの生存の機会を低めているのはあなた自身かもしれません。

親は子に先立つのが順番。その時、この子を置いて死ねない、いっそひと思いに道連れに、なんて思ったら、子どもの命を奪うことになります。子どもさんはどんなにかわいくても、あなたの独占的な所有物ではありません。どんな子どもにだって、生きる権利があります。‥‥‥それならなんとか子どもさんがいずれはあなたなしでも生きていけるような手立てを考えてみてください。

そのための制度的な手段は、介護保険や障害者総合支援法などでそろってきました。日本の社会福祉制度は諸外国に比べてもそんなに見劣りするものではありません。ただ、使い方がわからないだけで、今からでも自治体や障害者団体の相談窓口に行って何が使えるのかトライしましょう。「施設入所」か「生活保護で在宅ケア」か、二つ以外の選択肢が見つかりますよ。>

上野先生のアドバイスで私も救われました。とくに「どんな子どもにだって生きる権利があります」はあらためて心にしみわたりました。

日本の法律では妊娠22週以降の中絶は禁止されています。妊娠22週になるとお母さんの体から離れても生きていける可能性があるからです。昔は妊娠24週でした。医療技術によって法律が変わってきたのです。法律がどうであろうと、本来、お腹の中の赤ちゃんには生きる権利があります。それを奪うのはイケナイことです。

妊婦健診でお腹の赤ちゃんに重度の心奇形があると分かったため大学病院へ紹介したお母さんがいました。お母さんは一部の望みをかけてお産まで頑張りましたが、結局、産まれた赤ちゃんはお母さんの腕のなかで亡くなりました。でもお母さんは言いました。

「赤ちゃんがお腹の中で元気に蹴ってくれたときはうれしかった」

私も、赤ちゃんもこんなに愛されて、お腹の中で幸せだった、と思ったことでした。

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