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忙酔敬語/院長ブログ

2018.3.19
第321回 忙酔敬語 出生前検査について考える

「私、出生前検査を受けた方がいいんでしょうか?」

30歳後半の妊婦さんに訊かれました。

こうした場合、染色体異常について統計にもとづいた説明や検査法、羊水検査の危険性などを説明するのが一般的です。いわゆる説明と同意です。

この説明と同意、どうも好きになれません。説明は治療者の知識の範囲内で行われ、同意は患者さんがその説明をすべて理解したというのが前提です。まことにもって無理なことです。また、説明者は淡々と語り、血がかよっていません。

以前、ある患者さんに大病院で初期の癌の治療法についていろいろな選択肢を提案され、さあ、どうしますか? と迫られ途方にくれた、と相談されたことがありました。

「先生だったらどうしますか? って訊いてみたら」と簡単な助言をしました。後日、はっきりした返事がもらえたと安心したそうです。

出生前検査についても、異常と分かっていても気持ちを整理して分娩にのぞむか、あるいはギブアップするか、その辺の確認が大切です。

ヨーロッパ先進諸国の多くが無料で出生前検査を行っていて、ドイツなどでは染色体異常児の分娩を選択した家族に対しても徹底的に援助するというシステムがととのっているそうです。しかし、優性思想がかいま見えて偽善的な印象を受けます。中絶という選択肢を選んでも無料だからです。

さて、先生ならどうしますか? という質問に対して医療者は自分なりの考え方を生身の人間として答えるべきだと、私は考えています。

「私なら出生前診断は受けません。受けたとしても異常が出たからといって妊娠の継続をあきらめるつもりはありません。でも、この説明はちょっと無理がありますね。私の年齢では子供はできないので机上の空論です。

では孫が生まれるとしましょう。残念ながら障害を持って生まれました。娘夫婦は大変です。それに対して全力で支援するつもりです。今、自分がたずさわっている仕事は場合によっては切り捨てます。仕事の代わりをしてくれる人はいくらでもいますが、我が子や孫を育てるのは親か祖父母が中心とならなくてはいけないと思うからです。

私の父はそそっかしい人物で、私が幼少のみぎり、あまりにもボーッとしているので知恵遅れと判断して、上司に、私を施設に預けてその代わりにしっかりとした子供を里子として引き取って育てたい、と相談したそうです。

それに対して、上司の方は、『佐野君、自分の子が育てられないからといって誰が育てると思っているんだ!』と一喝を喰らわしたそうです。

そのおかげで、私は無事現在に至っています。もし、父の上司の方のお名前が分かればお墓に行ってお礼をしたいのですが、残念ながら母は認知症で、そんなことがあったのかも分かりません。

大体、異常という線引きを人間が行うことは大それたことで、異常と判断された子供たちが実は人類を救う鍵を握っている可能性だってあります。

もちろん、これはあくまでも私の考えで、○○さんに押しつけるつもりはありません。○○さんの選択は尊重しますので安心してください」            ※次回へ続く。

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