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忙酔敬語/院長ブログ

2018.1.29
第314回 忙酔敬語 私を自由にさせないで

ヤーズフレックスが発売されてそろそろ9か月たちます。

ヤーズフレックスの売りは「生理からの解放」です。これは私が思いついたコピーで、製薬会社のバイエルが使用している言葉ではありません。

今までのヤーズは生理痛に苦しむ女性のために開発された28日周期タイプのピルですが、ヤーズフレックスは月に1回でもイヤだ、という女性にはうってつけの製品です。なんせ、不正出血がなければ120日まで飲み続けることができるのです。欧米ではすでにこのタイプのピルが大勢を占めているようですが、人と違うことをするのが苦手な日本人には、いやがる人がけっこういるのではないかと予想しました。

はたして今までヤーズを処方していた女性に、

「どうです、2,3か月に1回で済むピルにしてみませんか? 自由に生理が調節できるんですよ」とすすめても、

「やっぱり今まで通りでいいです」と拒否られる場合がほとんどでした。

しかし、なかにはちょっとしたくらいの出血には気にもとめず、120日をめざしてしぶとく頑張っている女性もいます。いくら「出血したら4日間休薬してくださいね」と言っても、頑として「頑張ります」と頑張っています。よほど生理でつらい思いをしたのでしょう。気の毒なことでした。でもラクになって良かったね。

自由というのは己がしっかりしていないとけっこうツライものです。

生きるレジメがないと何だか不安になるのが日本人の人情です。学校へ行く、仕事に行く、社会活動をする、など生活の基盤となるものがはっきりしていないと不安になります。

学校なんか行きたくないと言っても、じゃあ自由にしていいんだよ、と言われると逆に見放されたんだな、と思う不登校児もいるかもしれません。

飼育方法が確立していれば、野生よりも動物園の動物のほうが長生きするそうです。ネコが自由になったらノラネコ、イヌが自由になったらノライヌだな、でもすぐ死んでしまうだろうな、とバカな考えを巡らしているうちに、そう言えば、自由をもとめて家出した「ノラ」という女性の物語があったことに気づきました。

イプセン作『人形の家』です。

弁護士ヘルメルの妻ノラは、無邪気に夫の愛を信じていましたが、ある事件をきっかけに夫の愛は単なる猫かわいがりで、対等な人間としての自分を認めていないことに気づきました。わたしは単なる人形だった、これからは自立した人生を歩もうと、ヘルメルの制止を振り切ってノラは家を出ます。

教科書にも紹介されているフェミニズムの先駆けとなる作品ですが、私にはどこが良いのかサッパリ分かりませんでした。当時はまだ19世紀末。自由になってもノラの人生には厳しい試練が待ち受けています。ノラは今後の生活について具体的なビジョンでもあるのか、あまりにも行き当たりばったりなのではないか、と心配になりました。

そこでハタと気づきました。もし自分が「生活は保障するから明日から仕事をやめて好きなことをしていいよ」と言われたらどうしよう。

朝から酒を飲み、墜ちるところまで墜ちそうな気がします。

ウヒャー! オレも自由にさせないで!

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