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忙酔敬語/院長ブログ

2018.1.22
第313回 忙酔敬語 子宮頸がんは撲滅できる

1980年5月8日、WHOは天然痘の撲滅宣言をしました。私はこのニュースを札幌医大附属病院にある床屋さんのラジオで聴きました。そして感激のあまりウルッと来ました。

日本ではすでに天然痘は発症しなくなって久しいので、その何年も前から天然痘のワクチンは行っていませんでしたが、WHOの宣言で外国から進入する心配もなくりました。

天然痘のワクチンは種痘といって腕に2カ所傷つけて弱毒化した天然痘ウィルスを植えつけるのですが、けっこう副反応はありました。私も子供の時に受けましたが、「痒い痒い」と言って掻きむしったので、他の子よりも痕が目立ってしまいました。映画の時代劇でも腕まくりした女優さんに種痘の痕のあるので興ざめでした。瘢痕くらいならまだしも発熱したり全身状態が悪くなった子供も多々ありました。100万人あたり脳炎が20例、死亡が10例もありました。以降、世界中で種痘は行われなくなりました。人類は天然痘との戦いに勝利したのです。まさに戦争でした。種痘が原因で亡くなったり後遺症が残った人たちはまことに気の毒ではありますが、戦争では多少の犠牲者はつきものです。

さて、子宮頸がんについて。子宮頸がんの原因はパピローマウィルス感染です。パピローマウィルスはイボを作るウィルスの仲間ですが、その200種類のうち、1割くらいが発がん性を持っています。とくにタチの悪いのが16型と18型です。

こう説明すると、まるで子宮頸がんは性感染症みたいな印象を受けるかもしれません。しかし、パピローマウィルスはイボでも分かるように、粘膜や皮膚など体中どこにでも存在します。キスをしたり、はては手をつないだだけでも移る可能性があると言う研究者もいます。パピローマウィルスが原因となるがんは、食道、肛門、陰茎などいろいろありますが、とくに子宮の頸部のビランの付近に発症しやすい。その点、女性は損です。

子宮頸がんは婦人科医からすると目に見える部分にあるため、細胞診で早期に診断することができます。1、2年ごとに検診を受ければ、手に負えないほど進行するということはほとんどありません。この「ほとんど」という表現をしたのは、細胞診は資格を持つ検査技師と専門医が行うのですが、人間の行うことですから完璧というワケにはいかないからです。子宮頸がんにもいろいろなタイプがあり、なかには悪性と決めかねる細胞もあります。それでも日本の細胞診のレベルはさすが職人の国で正診率80%です。それに対して欧米では50%とのこと。ちょっと不安ですね。細胞診よりも感度が高いのはパピローマウィルスの存在を確認する検査です。子宮頸がんはパピローマウィルスが感染してもがんになるまで5年以上かかります。欧米ではすでにパピローマウィルス検査は一般的に行われていて、細胞診とパピローマウィルス検査に異常がなければ、5年に1回の検診で早期発見が可能とされています。日本は、もたもたしていて自治体によって対処が異なります。北海道では旭川市が補助金を出しているので、本人負担が500円でパピローマウィルス検査が受けられます。これで5年に1回ですみますから、札幌市の2年に1回の検査と費用については大差なく、さらにはがんの見過ごしが減少すると考えられます。

ご存じのようにパピローマウィルスに対するワクチンも受けられますが、副反応騒ぎのため、受ける女性が激減しています。しかし種痘ほどの被害はありません。これは人間対パピローマウィルスとの戦争です。ウイルスにだって生存する権利はあるんだという絶対的平和主義の人もいるかもしれませんが、私は徹底抗戦すべきであると考えています。

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